国内

森喜朗氏の失言で注目された女性秘書 永田町に捧げた89年の生涯に幕

葬儀場には安倍前首相から贈られた供花も(写真提供/河村建夫事務所)

葬儀場には安倍前首相から贈られた供花も(写真提供/河村建夫事務所)

 永田町で「議員より偉い」と謳われた伝説的な大物秘書・中内節子さんが8月21日、肺炎のため逝去した。享年89。節分生まれの節子さんは、故・田中龍夫元文部大臣、後継の河村建夫元官房長官と二代、58年にわたって秘書を務めた。

 中内さんは最近、森喜朗元首相のこの発言で一躍“時の人”となった。

「河村さんの部屋に大変なおばちゃんがいる。女性というにはあまりにもお年だ」

 女性蔑視発言で五輪組織委会長を辞任した直後とあって世間からは猛批判を浴びたが、当の中内さんは意に介していなかった。

 中内さんが秘書人生をスタートした1963年、森元首相も岸信介側近の衆議院議員・今松治郎氏の秘書をしており、二人は秘書仲間だった。「角福戦争」と呼ばれた熾烈な政治闘争では、ともに福田赳夫陣営の同志として参戦。酸いも甘いも噛み分けた「戦友」だったのである。

 その後、田中龍夫氏が引退し、旧・山口1区で後継となった河村氏が田中氏の事務所も秘書の中内さんもそのまま引き継いだ。中内さんはすでに秘書歴30年近い大ベテランで、河村氏に対して「早く中内さんから独り立ちしないとな」と皮肉交じりにからかう人もいた。

 だが、河村氏は公設秘書の定年である65歳を超えても中内さんを私設秘書として雇い続けた。それだけ中内さんの存在が大きかったということだ。

 首相になったばかりの頃の小泉純一郎氏に「あら純ちゃん、あなた偉くなったわねえ」と声をかけ、同じ山口県選出の安倍晋三前首相については「子どもの頃、夜行列車で騒いでいたから注意したのよ」とピシャリ。大物政治家との逸話には事欠かない。

 しかし決して偉ぶらず気さくな人柄で、30年前、山口県でNHKの新米記者をしていた筆者にも親しげに話しかけてくれた。

「あなた、いい人いるの?」
「いいえ、いません」
「それなら紹介してあげるわ。素敵な方を紹介するから写真を撮らせて」

 事務所の壁際に立たされ、使い捨てカメラで写真を撮られた。ところが間もなく私に「いい人」ができて、「すみません。あのお話はなかったことに」とお詫びした。

 中内さんの葬儀は親族のみで行なわれたが、それでも安倍晋三氏からは供花が届いていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン