芸能

西島秀俊 カンヌ4冠映画で見せた、朝ドラとは違う「映画人の表現」

映画やドラマの第一線で活躍し続けている(時事通信フォト)

映画とドラマの表現を巧みに使い分ける西島秀俊(写真/時事通信フォト)

 8月20日より公開中の、西島秀俊(50才)が主演を務める映画『ドライブ・マイ・カー』。第74回カンヌ国際映画祭にて最高賞を競うコンペティション部門への出品を果たし、日本映画として初の脚本賞を受賞するなど計4冠を達成した話題作だ。SNSなどの口コミには、「溜め息が出るほど素晴らしい映画」、「死ぬ前に見る最後の映画がこれでもいい」といった絶賛の声が多く並ぶ。映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんも、「映画でしか見れない西島秀俊の演技に注目」と太鼓判を押す。

 * * *
 一人の孤独な男が、自身の抱える喪失感に向き合い生きていく姿を描いた『ドライブ・マイ・カー』。本作は、作家・村上春樹(72才)による短編小説集『女のいない男たち』(文藝春秋)に収録されている『ドライブ・マイ・カー』を、『ハッピーアワー』や『寝ても覚めても』などの作品が国内外で高い評価を得てきた濱口竜介監督(42才)が映画化したもの。第74回カンヌ国際映画祭では脚本賞だけでなく、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞も受賞し、世界中から注目を集めている作品だ。

 物語のあらすじはこうだ。舞台俳優であり、演出家でもある家福悠介(西島秀俊)。彼の愛する妻・音はある日、とある秘密を残してこの世を去ってしまう。それから2年後、広島での演劇祭に自身の愛車で向かった家福は、寡黙な女性・渡利みさきを専属ドライバーとして紹介され、自身が審査するオーディションで、かつて音から紹介された俳優の高槻耕史と再会する。家福は彼らと出会い、日々交流をしていく中で、それまで向き合うことを避けてきたことに気付かされていくことになる。

 カンヌで脚本賞を獲った作品とあって、シナリオの練られ方は驚くべき高水準となっているが、それを体現する俳優たちの存在も素晴らしい。寡黙なドライバー・渡利みさきを演じる三浦透子(24才)は、抑制の効いた声色と表情の操作で喪失感を抱える主人公・家福と並走し、家福の妻役の霧島れいか(49才)は“去ってしまった後もどこかにいる”ような気がしてならないミステリアスな存在感を放っている。アクの強い若手俳優役に扮した岡田将生(32才)は、物語に転換点を与える役どころを妙演。近年メキメキと頭角を現している彼だが、本作でさらに飛躍を遂げている。

 そんな実力派揃いの座組の中心に立つのが主演の西島秀俊である。近年は、テレビドラマの出演も大幅に増え、現在はNHKの朝ドラ『おかえりモネ』に出演中。つい最近まで『シェフは名探偵』(テレビ東京系)でも主演を務めていたとあって、彼に対して“テレビの人”という印象を抱いている方は少なからずいるのではないだろうか。特に、老若男女、視聴者層も幅広い朝ドラの影響は大きいだろう。快活な朝の気象キャスター役ということもあり、視聴者に向けた演技は分かりやすくて明確だ。しかし、そんな西島のテレビで見せるイメージは、本作を観れば一変することだろう。そう思わせるほど、テレビと映画での西島は違うのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された愛子さま(2025年5月8日、撮影/JMPA)
《初の万博ご視察》愛子さま、親しみやすさとフォーマルをミックスしたホワイトコーデ
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン