中高年には着こなせなかったピチピチトレンド
ジーユーが「きゃりーぱみゅぱみゅ」さんを起用して、若者向け低価格トレンドブランドとして再始動したのが2010年のことです。この取り組みが奏功してジーユーは一気に人気ブランドとなりました。
また、ベーシックなユニクロに対して、トレンドのジーユーという棲み分けもでき、ファーストリテイリングの2本柱としての実績を確立しています。2010~2015年ごろまでは狙い通りに若者客しかいなかったのですが、これは中高年には着こなしが難しいトレンド商品だったということ以外にもう一つの要因がありました。それは「サイズ」です。
2003年ごろから10数年、ファッショントレンドは全体的にタイトシルエット一辺倒でした。上下とも体に貼りつくような細身のシルエットの服が「かっこいい」とされたのです。今でも定番的に残っているスキニージーンズがその代表例です。2015年ごろまで男性も女性もスキニージーンズにピチピチのTシャツを合わせていたのを覚えている方も多いでしょう。
若者と中高年では体重が同じでも体つきが変わります。特に男性は30代以降になると学生時代と体重が変わらなくても骨格や筋肉がゴツくなる傾向にあります。
若者向けだったジーユーのタイトシルエットだと、中高年にはあまりにもキツすぎたのです。中高年もターゲットに入っているユニクロは同じタイトシルエットでももう少し緩めだったので、中高年はユニクロで買うことがほとんどでした。
2015年から注目されたルーズシルエット
ところが、2015年くらいからファッショントレンドの揺り戻しで、ルーズシルエット、オーバーサイズが注目され始めます。もちろん仕掛けた業者もいるのでしょうが、にわかにマストレンドが変わり始めました。そして、ジーユーも徐々にビッグサイズ化し始めたのです。
筆者もこれまで大したスポーツ歴もないのにガッシリした体つきのため、当然ジーユーの商品はきつすぎて買ったことがありませんでした。そんな自分が初めてジーユーを買ったのも2016年のことだったと記憶しています。Lサイズを買えば着られるようになったのです。
同じように感じた中高年男女も多いのではないかと思いますが、その証拠に、2017年以降、ジーユーの店舗で明らかに40代以上と思われる男女を見かけることが増えました。サイズ感が大きくなったから着用できる中高年が増えたのでしょう。20代の息子や娘と一緒に買い物をする40、50代の両親も珍しくなくなりました。今回の「オトナGU」の打ち出しはこの現状を追認したものだといえます。
今や、メンズの洋服はユニクロよりもジーユーのほうが同じ表記サイズでも大きい寸法の物がほとんどになっています。ルーズシルエットが廃止にならない限り、価格の安さも手伝ってジーユーで買う中高年が増えることはあっても減ることはないでしょう。