ライフ

がんになった緩和ケア医の本音「がん患者への目線も変わった」

緩和ケア医の大橋氏

緩和ケア医の大橋氏

 終末期のがん患者と向き合うのが緩和ケア医の重要な仕事のひとつだが、「医師と患者」という関係性のなかだけでは、見えにくい部分もあるのかもしれない。

『週刊ポストGOLD 理想の最期』ではジャーナリスト・岩澤倫彦氏が“がんになった緩和ケア医”にインタビューし、そうした経験から見えてきた「人生の終わり方」についての考えをレポートしている。

 * * *

 緩和ケア医の大橋洋平医師は、2018年6月に胃の入り口に10センチ大のがんが見つかった。ジスト(消化管間質腫瘍)という、希少がんの一つである。手術で胃をほぼ全摘したが、翌年には肝臓の転移が見つかった。以来、抗がん剤治療を続けている。

 その経験を『がんを生きる緩和ケア医が答える命の質問58』(双葉社)などの著書に記した。患者の立場になって、初めて分かったことも多いという。その一つが「オムツ」。

「ジストで入院中に、私も初めてオムツを付けました。それで排泄しても大丈夫と言われても無理です。這ってでも、自分でトイレに行きたい。それなのに医者として私は “オムツにしてください”なんて平気で言っていました」

 以下は、そうした経験を持つ大橋医師の「最期」についての考えだ。

●緩和ケアの必要性

「がんが進行して死が実感されてくると、身体だけでなく、心、いわゆるスピリチュアルな痛みがどんどん強くなっていきます。それは薬では取れません。早期からの緩和ケア、というけれど、本当に必要性が出てくるのは後半戦。そして忘れられがちなのが、家族の苦しみです。これを和らげるのも緩和ケアの大事な役割です」

●死に場所にこだわらない

「最期は家で死ぬか、病院か、という議論は意味がないと思います。病院はプライバシーもない。コロナ禍では面会もできない。もちろん、家で自由に過ごす方がいいに決まっています。でも、最期は家族に負担をかけたくない、という理由から病院で死にたいという患者もいました。言えることは、患者が“自律的”に決めるということではないでしょうか。“自律”が保たれている時、人間は苦しくないのです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン