8月24日、この日の大阪府の新規感染者数は2368人。感染がピークを迎えていた。対応する保健所もてんてこ舞いだったと考えられるが、こちらも身の危険を感じている。「それは自宅で死んでおけということですか?」という言い方をすると、先方も深刻さを感じ取ったようだ。「何とか手配します」と電話が切れた。さらに1日待って返信があった。
「ホテルが手配できました。明日から入れます」
結局、コロナと診断されてから隔離施設に入るまでに5日かかった。その間、医療は一切受けていない。実はこの影響が大きかった。重症化を防ぐとされる抗体カクテル療法は発症から7日以内でないと投与できない。僕はホテルを待っている間にその期間を過ぎてしまったのだ。コロナ治療にあたっている感染症の専門医は、僕の回復後に語った。
「この頃に抗体カクテル療法を受けておけば、こんな苦しい思いはしないで済んだと思いますよ」
さらに、この専門医は「だからワクチンを打っておけばよかったでしょ」とダメ押しも。打ちたくなかったわけではなく、予約がいっぱいで取れなかっただけだ。とはいえ、ホテルが決まった時は、これで医療を受けられると少しほっとした。保健所が手配した搬送用タクシーでホテルへ向かった。
(後編に続く)
■取材・文/相澤冬樹(ジャーナリスト)