国内

「毒性が強いコロナ変異株は発生しない」英ワクチン開発者の発表の根拠とは

デルタ株で入院するリスクは、従来株の2倍以上(写真/共同通信社)

デルタ株で入院するリスクは、従来株の2倍以上(写真/共同通信社)

 第5波が急速に落ち着いても、不安は尽きない。原因は「変異」だ。いつ、どこで、どんな強毒化を起こすかわからない以上、ずっと人類は新型コロナウイルスに悩まされ続けるのか──。だが、実は「もう強毒化はしない」と、あるウイルス研究の権威が発表し、注目を集めている。

 いまから130年以上前の1889年5月、帝政ロシア支配下のオアシス都市・ブハラで謎の疫病が発生した。感染すると瞬く間に症状が悪化し次から次に亡くなっていく。感染はヨーロッパ、アメリカへと一気に拡大。まだ飛行機のない時代にもかかわらず、「ロシアかぜ」と名付けられたその感染症は、たった4か月で地球を一周したとされる。

 日本では翌1890(明治23)年に流行し、「お染かぜ」と呼ばれた。当時、東京で人気だった『お染久松』という芝居から取られた俗称で、病気の侵入を防ぐために《久松留守》《お染御免》と書いた札を家の入り口に貼るのが流行したという。子供は重症化しなかった一方、高齢者の致死率が異常に高かったとされ、新型コロナウイルスとの共通点も多かったようだ。昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんが言う。

「19世紀末のロシアかぜは、最新の研究で、現在のかぜのウイルスの1つである『ヒトコロナウイルスOC43』によるものであった可能性が高いとわかりました。現在でいうところの“新型コロナウイルス”であり、世界中で100万人近くが亡くなりました」

 医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが続ける。

「ロシアかぜは変異を繰り返しながら蔓延していったとされています。実際、ロシアかぜと新型コロナは症状や感染の広がり方が似ていると指摘する研究者は多い」

 だが、人類を恐怖のどん底にたたき落としたロシアかぜも、その猛威は突然消え去った。発生からおよそ6年後のことだ。なぜこつ然と消滅したのか──。

 いま世界中で、新型コロナの最大の脅威と考えられているのが「変異」であることは言うまでもない。昨年秋には、従来株よりも感染力の強いアルファ株へと変異し、それ以外にもベータ株、ガンマ株へと変異を続けていた。最近では、若年層をも重症化させるデルタ株が世界で猛威を振るっている。

 さらに、「感染収束の切り札」と期待されてきたワクチンが効きづらい特徴を持つミュー株、強い感染力とワクチン抵抗力を併せ持つラムダ株といった新たな変異株も次々に確認されている。

 結局、ワクチンを打っても、またウイルスが変異したら意味がない。日本でデルタ株の第5波が落ち着いても、さらに“強毒”の変異株が出現して第6波が来る──いつまでもそうしておびえ続けなければならないのだろうか。

 そんな不安が広がるなか、あるトップ研究者の発表が注目を集めている。9月22日、英国王立医学会のオンライン講演会の壇上に、白いジャケットを着た女性の姿があった。栗色の髪を後ろで束ね、黒縁の眼鏡をかけた彼女の名は、デイム・サラ・ギルバート。オックスフォード大学教授で、同大学とアストラゼネカ社によるコロナワクチンの開発にも携わったウイルス研究の権威である。そこで彼女はこう力説した。

「ウイルスは免疫が高まった集団に広がると、時間とともに毒性が弱まる傾向にある」
「今後、より毒性が強い新型コロナの変異株が発生することは考えにくい」

 そしてギルバート教授は次のような見通しも示した。

「新型コロナの症状は、今後は軽くなっていき、最終的には季節性のかぜを引き起こすウイルスの1つになる」

 新型コロナの脅威はもう終わる──彼女がそう言い切る根拠はどこにあるのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト