さらに木村氏によれば、ニート系YouTuberの動画には規制が緩かった時代のテレビ番組にも似た魅力があるという。
「昔のテレビ番組にはどぎついドッキリ企画がよくありました。『電波少年』シリーズなんかがそうですが、今は色々な規制もあってできないんです。それにネット上で炎上したり社会問題に発展したりするリスクもあります。
ニートを映したドキュメンタリー番組というのも、今はなかなか難しい。紙一重ですから。しかし視聴者にはそうした映像を見たいという欲望がある。同じような境遇で共感したり、好奇心を掻き立てられたりするんですね。そうした中、ニート系YouTuberはご自身でそうした動画を発信している。つまり、今の時代には難しくなった昔のリアリティー番組と近い魅力を、自分自身で曝け出しているとも言えます。
視聴者がリアリティーを求めているということも指摘できそうです。テレビでは昔から“ヤラセ問題”が議論を呼んできましたよね。『電波少年』でも、ヒッチハイクと言いつつ実は飛行機を使っていたことが判明して、『演出じゃん!』と総ツッコミを食らったことがありました。やっぱり視聴者はトラブルやハプニングを求めていて、そうした企画がテレビだと難しいぶん、YouTubeでリアリティー番組に近い動画が注目を集めているのではないでしょうか」(木村博史氏)
当然ながら、ニート系を名乗るYouTuberが実生活においても無職であるかどうかは、実際のところはわからない。また、厳密にはニートと無職は異なる。もしも単なるネタとして無職を扱っているのであれば、職を得ることができない社会的/個人的な状況に苦しむ人々に対する認識や配慮が、配信者に欠けているとも指摘できる。もちろん、実際に職を失った自らの境遇を一種のセルフ・ドキュメンタリーとして配信しているYouTuberもいることだろう。
いずれにしても、こうした種類の動画はここ数年の間に一気に注目を集めるようになってきた。そのきっかけについて、木村氏はこう分析する。
「一つの発端はひろゆきさんだと思います。彼は2018年頃からYouTubeの生配信を始めて、ニートや無職のネタをよく話していました。ひろゆきさんのYouTube動画は第三者による切り抜き動画も含めて、結構バズっているものもあります。
YouTubeはプラットフォームの仕組みとして、何かバズるキーワードが出てくると、それにつられて全体が底上げされて見られるようになっているんですね。再生回数がそこまで多くなくても検索した時に上位に出てきたり、関連動画としてオススメ表示されたりします。なのでひろゆきさんを発端にニートや無職といったキーワードがバズり、それを一つのきっかけとしてニート系の動画に接する人が増え、見てみると案外テンポ良く面白い映像として仕上げられているので再生回数も伸びていったのではないかと」
YouTuberとして成功するための実践的な法則の一つとしても、ニート系動画から学ぶことができる点は多々ありそうだ。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)