各球団から調査書が届き、面談もおおよそ終わっていた。運命のドラフトを前に、森木は「12球団OK」の構えだ。
「ただ、将来的にメジャーに行きたいという目標は伝えさせてもらっています。自分が良い状態の時にアメリカに行きたい。もちろん、そんな自分の思い通りに事が進むとも思っていません。特にファンだった球団はないですけど、できることなら、メジャーに挑戦させてもらえる球団に行きたい。高校で勝てなかった分、上の舞台でしっかり勝てるピッチャーになりたい」
森木の夢は馬淵に阻まれた。甲子園には届かずとも、森木を成長に導いてくれたのもまた、馬淵ではなかったか。チームに勝利を呼び込む怪物へと成長を遂げるのはプロの舞台である。
取材・文/柳川悠二(やながわ・ゆうじ)
ノンフィクションライター。1976年、宮崎県生まれ。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。著書に『永遠のPL学園』(小学館文庫)。2016年、同作で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号