「薬局ヒヤリ・ハット」に報告された「使用禁忌」の危険な事例【1】

「薬局ヒヤリ・ハット」に報告された「使用禁忌」の危険な事例【事例1、事例2】

 病院薬剤師としての勤務経験があり、これまで医師による「危ない処方」を目の当たりにしてきた銀座薬局代表薬剤師の長澤育弘氏が指摘する。

「処方された夜間頻尿薬は尿崩症という病気の治療に用いられます。尿が出すぎないよう水を体内で再吸収する働きを助けますが、ナトリウムは再吸収されず尿として排出されます。そこに利尿薬が合わさると、さらにナトリウムが排出されるので、最悪の場合は死に至る『低ナトリウム血症』を引き起こします」

 同様に併用禁忌とされるサイアザイド系利尿薬(インダパミド)と夜間頻尿治療薬(デスモプレシン酢酸塩水和物)が同時処方された80代男性の事例もある。途中までは薬剤師も見落としたまま調剤されたが、薬を手渡す前の最終チェック段階で発見されたという。

「デスモプレシン酢酸塩水和物は珍しい薬で、医師も薬剤師も併用禁忌を把握していないケースが多いと考えられます」(長澤氏)

 降圧剤が高血圧以外の治療を目的に処方され、併用禁忌が生じたというケースもある。

 β遮断薬(プロプラノール塩酸塩)と、併用禁忌の解熱鎮痛薬(リザトリプタン安息香酸塩)を同時処方されたのは30代の男性(別掲の事例2参照)。薬剤師が疑義照会したところ、医師は「併用禁忌は知っていたが、混雑のためうっかり処方してしまった」という。

 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎医師が指摘する。

「β遮断薬は高血圧だけでなく片頭痛の治療にも使われます。リザトリプタン安息香酸塩も片頭痛治療薬なので、30代の患者さんは片頭痛を訴えて受診し、とりあえず2種類の薬を処方されたのだと考えられます。併用により後者の作用が増強されるため、呼吸困難や失神などの副作用が強く出る恐れがあります」

 特定の病気の患者にだけ禁忌とされる組み合わせもある。

 降圧剤の直接的レニン阻害薬を服用中の50代女性は、血圧上昇が認められたため新たに降圧剤(ARB)が追加処方された。実は女性は糖尿病を併発しており、追加処方された組み合わせは「糖尿病患者に使用する場合」に併用禁忌だった。

「製薬会社のサイトによると、糖尿病患者に対する治験の結果、直接的レニン阻害薬とARB/ACE阻害薬の併用で脳卒中や腎機能障害、高カリウム血症などの発症リスクが高まる可能性がわかったということです。糖尿病でなければ『併用注意』なので、専門家でも混乱するタイプの併用禁忌事例と言えます」(長澤氏)

 一方、糖尿病治療薬そのものでは、併用禁忌は多くないという。

「唯一あるのが血糖降下作用のあるスルホニル尿素(SU)薬のグリベンクラミドと、肺高血圧症治療薬のボセンタン水和物との飲み合わせです。添付文書には肝酵素値上昇の発現率が増加したとあり、肝細胞内に胆汁酸塩が蓄積し、肝機能障害が生じるリスクがあります」(長澤氏)

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