遺品を手放す大きなきっかけとなった七回忌
さらに多くの荷物を減らすことができたのは、七回忌を過ぎて気持ちが大きく切り替わってからだ。それまでは、メモや文房具も何となくしまい込んでいたが、捨てようとか、使っちゃえなどと思い切れるようになったのだ。
「そういえば、今日処分し終わったのが、大量にストックされていた歯ブラシ。消耗品であっても、すごく安いとか、性能がいいとか、何かのこだわりがあって夫が買ったものですから、去年まで手をつけられなかったんです。でもコロナ禍になって、ふと『使おう』と思えたんです。今日、その最後の1本を使い終わったところです」
仏壇には、哲雄さん愛用の眼鏡とアームバンドの2品を置いている。これだけは、亡くなってすぐに「手放せないもの」と判断できたという。
人によって心の整理にかかる時間は異なり、遺品を整理するタイミングも異なる。処分しようと決心しても、いざとなったら躊躇してしまうことも多々ある。
「処分しなくても、箱に詰めて目に入らない場所にしまう、それだけでもいいんです」
一度にゼロにする必要はない。段階を踏んで、自分の気持ちに正直に少しずつ。これを繰り返すうちに、本当に手元に残しておきたいものが見つかるのだから。
【プロフィール】
金子稚子さん/1967年9月29日生まれ。編集者として活動後、流通ジャーナリスト・金子哲雄さんと結婚。闘病生活を支え、哲雄さんの死後は、終活ジャーナリストとして新しい終活の形を模索。「ライフ・ターミナル・ネットワーク」代表として、いつか迎える“そのとき”のために、情報提供やワークショップを開催している。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2021年10月21日号