国内

新しい落選運動 都議選で10人落選させた「ヤシノミ作戦」とは

今年の都議選で見られた落選運動「ヤシノミ作戦」とは?(写真はイメージ)

落選運動「ヤシノミ作戦」はどう実行されたのか(写真はイメージ)

 間近に迫る総選挙では、有権者が「1票」を行使して政治に物言うこととなる。総選挙で投票したい候補がいないなら、有権者が「ためにならない」と考える政治家を懲らしめる方法がある。それが落選運動だ。一言で言えば、国民が候補者の素行や過去の言動をチェックしてその事実を他の有権者に広く知らせ、当選させないようにする。やり方は、ネットやSNSでもいい。

 落選運動の賛同者が全国に広がったとしても、落選させたい議員が自分の選挙区ではない――そんな場合は「ボート・スワッピング(投票交換)」という方法がある。ITジャーナリストの三上洋氏が指摘する。

「自分が落選させたい候補者の選挙区在住者と、自分の選挙区でその人が落選させたい候補者が合致すれば票を交換するのです。SNSなどで呼びかけて票の交換についてのやりとりをします。たとえば、ハッシュタグの『#落選運動2021』と連携させて呼びかければ、興味がある人が集まってくる仕組みになっています。ただし、選挙においては投票の自由があるたため、強制はできません」

 一人の力でも政治家にノーを突きつけることができる落選運動だが、活動する上で留意しなければならない点がある。前回総選挙で「落選運動を支援する会」を立ち上げた憲法学者の上脇博之・神戸学院大学法学部教授が語る。

「個人でやる落選運動なら公選法の制限がないので自由にできますが、団体でやる場合は選挙期間中だと政治団体と見なされることがあり、一定の規制があります。

 個人活動で注意すべきなのは、選挙期間中にホームページやブログを通じて呼びかけたりする場合に、自分の名前や連絡先などを記載していないと公職選挙法のネット選挙運動に違反する可能性があることです。

 また、選挙期間中にメールを使って運動する際に実名を記載せず匿名でやるのもダメです。正体不明のメール扱いで通報される可能性もあります。SNSは匿名でも大丈夫ですが、他人の名前を騙ったり、事実無根の誹謗中傷はやってはいけません」

 特に気をつけたいのが、「××候補を落選させるために、〇〇候補に投票しよう」と、落選させるために他の特定議員への投票を呼びかける行為だ。これは落選運動ではなく選挙運動と見なされ、公選法の規制対象となる。

「都議選で10人落選させた」

 前回総選挙から4年、すでに一部では落選運動の動きが加速している。前出の三上氏は、ネットを使った落選運動の新しいケースとして「ヤシノミ作戦」を挙げる。

「選択的夫婦別姓や同性婚を進めない政治家をヤシノミのように落とし、それ以外の候補者を当選させる活動として、ソフトウェア開発会社『サイボウズ』の青野慶久社長がサイトを管理し、共同呼びかけ人としても名を連ねています。同サイトでは今年7月の都議選で選択的夫婦別姓制度の導入に反対と答えていた候補10人を落選させたと報告しています。このようにテーマを絞って、政治家の賛否を明らかにしての活動だと、党派色やイデオロギーがないため抵抗感なく共感する人が集まるようです」

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン