ライフ

半蔵門ミュージアム【2】筋骨隆々の仏画に「何とも謎が多い」と壇蜜

『大威徳勇勝明王像』絹本着色 17世紀。本来の姿を示す本地仏と思われる尊像が頭上に描かれている

『大威徳勇勝明王像』絹本着色 17世紀。本来の姿を示す本地仏と思われる尊像が頭上に描かれている

半蔵門ミュージアム

『地蔵菩薩像』絹本着色 鎌倉~南北朝時代(13~14世紀)。本来の地蔵菩薩は菩薩の姿だが、中国起源と思われる比丘(僧侶)の姿で描かれている

 日本美術応援団団長で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・千代田区の半蔵門ミュージアムの第2回。2人が、不思議な仏画の数々を見て回る。

山下:真如苑が所蔵する仏教美術品を公開する場として平成30年にオープンしたのが半蔵門ミュージアムです。運慶作とされる大日如来坐像が常設展示されている他、所蔵品による特集展示も行なわれ、12月19日まで「みほとけの姿 ―如来・菩薩・明王・天・羅漢―」展が開催されています。

壇蜜:仏さまによって表情や装い、印の組み方も様々です。『大威徳勇勝明王像』のような、筋肉ムキムキの仏さまもいらしたとは。

山下:体つきといい、構図といい、他に類を見ない不思議な仏画です。左上に大威徳勇勝明王と記され大威徳明王と関わりがあると考えられますが、経典が説く大威徳明王の像容とは異なる。紫の色が中国特有の染色なので、道教にまつわる明王像かもしれません。

壇蜜:なんとも謎多き仏画なのですね。人々の煩悩を打ち破る怒髪の明王像に対して、『地蔵菩薩像』はほっと心安らぐお姿です。

山下:菩薩は私たちの世界にいる、親近感のある身近な仏さまです。片足ずつ蓮の花に乗せているのは自由に動いて、どこへでも苦しむ人々を救いに行くということを表わしています。

壇蜜:常設展示の『両界曼荼羅』に描かれた地蔵菩薩とは風貌が異なり、同じ仏さまでも時代や土地ごとの違いを見比べる奥深さがある。特集展示で多様な仏さまを知ることが曼荼羅の理解へ繋がり、仏教美術に親しむ助けにもなります。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)

●半蔵門ミュージアム
【開館時間】10時~17時半(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜・火曜(祝日、振替休日の場合も休館)、年末年始、臨時休館あり
【入館料】無料
【住所】東京都千代田区一番町25

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年10月29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
盟友・市川猿之助(左)へ三谷幸喜氏からのエールか(時事通信フォト)
三谷幸喜氏から盟友・市川猿之助へのエールか 新作「三谷かぶき」の最後に猿之助が好きな曲『POP STAR』で出演者が踊った意味を深読みする
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン