ビジネス

EVの充電ストレスはどこまで軽減されたのか 日産リーフe+で横浜─鹿児島を走破

横浜を出発し、三重県四日市で1回目の充電をする日産「リーフe+」

横浜を出発し、三重県四日市で1回目の充電をする日産「リーフe+」

 EV(電気自動車)の普及が進んでいるが、長旅の際にどうしてもストレスとなってしまうのが、航続距離の短さや充電時間・回数の多さだ。はたして現状のEVの技術力や街中の充電環境はどこまで進歩しているのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、日産自動車の「リーフe+」で横浜─鹿児島間のロングドライブを試みた。

 * * *
 世界中で日増しに強まるクルマの電動化圧力。しかもそのトレンドは省燃費技術であるハイブリッドカー(HEV)や短距離なら充電電力のみで走行可能なプラグインハイブリッドカー(PHEV)ではなく、内燃機関を搭載しないバッテリー式電気自動車(BEV)だ。

 BEVはクルマとしてのパフォーマンスは全般的に良好だが、「航続距離が短い」「充電に時間がかかる」など、実用上の弱点もいろいろ抱えている。ユーザーにとってはBEV一辺倒の世の中になったらクルマで得られる移動の自由が制約を受けるようになるのではないかといった不安が頭をもたげるところだ。

 その不安は無理からぬところだ。日本は2009年に三菱自動車「アイミーブ」、2010年には日産自動車「リーフ」がリリースされるなどBEVのスタートダッシュが早かっただけに、BEVの難しさや課題についても身をもって実感している国だ。

高速タイプの充電器が使用できる「リーフe+」

 たとえばフル充電での航続距離に頼らなくても済むようにするには急速充電インフラの整備が必須だが、充電に30分かかるようではBEVが増えた時にたちまちインフラがパンクしてしまうかもしれない。

 また急速充電器が技術の進化であっという間にスペック足らずになり、せっかく膨大な投資を行って整備したインフラがかえってBEV普及の足を引っ張りかねないといった事態も考えられる。

 日本はEV戦略で世界に後れを取っていると言われているが、それは政府やユーザーが保守的だからとは限らない。クルマをBEVへと抜本的に置き換えていくには、たとえテスラ車くらいのレベルであってもコストパフォーマンスや充電インフラの性能が到底足りず、大規模投資には時期尚早と、ここ10年あまりの経験から直感的に悟っている。

 とはいえ、BEVの市販やインフラ整備の足をまったく止めてしまっては、社会の進化そのものが止まってしまう。今日、日本の充電インフラの整備については日産が孤軍奮闘している感があるが、ここにきて日産ディーラーに少し性能の高い充電器が設置される例が増えてきた。

200アンペアでの充電は昔に比べると格段に素早い

200アンペアでの充電は昔に比べると格段に素早い

 最大で200アンペアの電流を流すことができ、充電電圧が370Vの場合、200×370=74000、すなわち74kWのパワーで充電できるというものだ。ずっと200アンペアが維持された場合、ロスゼロとすれば37kWhの充電ができる計算になる。

 筆者は2年ほど前、日産のBEV「リーフe+」で横浜を起点に九州~四国を4200kmほど巡ってみたことがある。標準タイプの約1.5倍に相当する総容量62kWhの大型電池を積み、高速タイプの充電器が使用可能、おまけにパワーも普通のリーフより格段に強力という高付加価値型のBEVである。

条件が良ければ70kW以上のパワーで充電できる「リーフe+」

条件が良ければ70kW以上のパワーで充電できる「リーフe+」

 2年前は最高200アンペアの充電器は全国に10数か所しかなく、たまにしか恩恵を受けることができなかった。が、現在は関東以西だけで100か所以上に増えている。これなら高速タイプの充電器ばかりを使って横浜から鹿児島まで到達できるのではないか、充電回数も上手くやれば30分×5回が視野に入る──と踏んで、再びロングランにトライしてみることにした。果たして何回のストップで鹿児島にたどり着けるか……。

リーフe+のセンターディスプレイ。改良によって充電スポットの検索や満空情報取得がやりやすくなった

リーフe+のセンターディスプレイ。改良によって充電スポットの検索や満空情報取得がやりやすくなった

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン