今後の懸念材料は「充電インフラのパンク」
だが、社会に浸透しているクルマをこの先、急激にBEVに転換して大丈夫かどうかについては、まったく別の話だ。1回につき30分の充電で走行距離200km、300kmという水準だと、BEVの販売台数が仮に今の10倍、新車販売の何割というレベルになれば、充電インフラをどれだけ増やしても需要が集中したところが日々パンクするであろうことは想像に難くない。
BEVは自宅に充電設備があればそれでかなりの電力をまかなえるので、必ず外で給油する普通の自動車よりお出かけ時のエネルギーチャージの量は少なくて済むが、それでもなお大混乱を来すことは避けられない。欧州、米国、中国等、クルマの電動化を推進する国はどこも同じことだが、今日のように自由にクルマで移動することが難しい期間が相当長く続くことが予想される。
今後の技術進化はそういうバリアをどうやって取り除くかということを志向するものになると予想される。5分でガソリン車の半分の400kmぶん、電力量にしておおむね50~60kWhがチャージ可能になれば、大量のクルマがBEVになっても道路交通は破綻せずに済むだろう。
そのためには高充電電圧、大電流に耐えるバッテリーの開発や、膨大な電気エネルギーを安定的に供給できる電力網、あるいは鉄道を電化するように道路に超高効率な非接触式の電力供給線を埋め込む等々、今はまだ存在しないソリューションを生み出さなければならない。世界の自動車メーカー、重電メーカー、電池メーカーなどクルマの電動化のメインプレーヤーにとって最大の競争領域となるだろう。
別の角度から見ると、そういうものがまだ存在しない今は、社会インフラを抜本的に変革するような巨額投資を行うには時期尚早とも言える。
ただ、技術開発というものは社会の熱気に促されるという側面もあるので、単にできるのを待っているだけでは最初から勝負を投げるようなもの。BEVや充電インフラでいち早くスタートダッシュを決めても、それが優位性を確保することにつながらないということを経験した日本がこれからどういう戦いを演じるのか──。あらためて興味を抱かされるツーリング体験であった。
日産の新ロゴマークが装着されている「リーフe+」