ライフ

ジェネリック処方に慎重な大学病院院長「患者中心の医療を考えた結果です」

川崎医科大学附属病院病院長の永井敦医師

永井敦医師が答えた

 全国でジェネリック医薬品(後発医薬品)を巡る“事件”が相次いでいる。日医工(富山市)では、医薬品の製造工程や出荷検査で組織ぐるみの不正を行っていたことが発覚。小林化工(福井県あわら市)では、睡眠導入剤の成分が混入する事件が起きた。

 しかし近年、政府の推進策もあってジェネリックは急速に普及している。直近の統計では全国のジェネリック処方割合は平均8割以上に達する。調剤点数の優遇制度も設けられ多くの病院がジェネリック優先の方針を取るが、一方で極端に使用割合が少ない病院もある。

 2019年度のジェネリック処方率が63.79%だった川崎医科大学附属病院病院長の永井敦医師がインタビュー取材に応じた。

 永井医師は、「最近のジェネリック医薬品に関する報道等を見ても、安全性に疑問を持っています」と語る。

 永井医師によると、同院は「現時点では必要以上にジェネリック医薬品を導入しない方針」だという。そのような判断に至った背景には、どんな理由があるのか。

「爪水虫薬に睡眠導入剤が混入されるなど相次ぐ不適切事例が報道され、実際に当院からもジェネリックが自主回収されて先発医薬品に切り替える必要が出るなど、対応に追われてきました。現時点ではジェネリック推進の議論は止まっています」(永井医師)

 そもそも川崎医大病院、そして永井医師が最初にジェネリックに疑問を持ったのは、2009年に非ステロイド系の鎮痛消炎貼付剤(湿布薬)をジェネリック製品に切り替えたことがきっかけだった。

「変更後、患者さんや医師から『すぐに剥がれる、かぶれる、どうにかならないか』とのクレームが続出し、速やかに先発品に戻しました。この頃から、医師の間でジェネリックに関する不信感や疑問の声が上がっていたと記憶しています」(同前)

 その後、厚生労働省は2013年にジェネリック普及のための「ロードマップ」を策定。川崎医大病院も、2014年から「遅ればせながら、積極的に採用する方針」(永井医師)に変わったという。しかし、患者からの苦情は続いた。

「血液疾患に用いる免疫抑制剤をジェネリックに変更したところ、患者さんから『効かない』との訴えがあり、当院は通常院内で処方しているのですが、この時は先発薬の在庫がなく例外的に院外で処方してもらいました。

 多くの感染症治療に用いられる経口抗菌薬のジェネリックを処方した際も、患者さんから『これで効かなかったら病院のせいだからな』とクレームが入ったことがある。

 私自身、泌尿器科外来を担当していた時に前立腺肥大症治療薬をジェネリックに切り替えたところ、患者さんから『なんとなく違う、効果が悪い』と言われたことがあります。尿を出やすくするための薬だったので、排尿時の感覚が違ったのでしょう。先発薬に戻したところ、『良くなった』と言われたことを覚えています」(同前)

関連記事

トピックス

クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
“飛ばし屋あいちゃん”の異名も
《女子ゴルフ後藤あい》16歳ドラコン女王“驚異のぶっ飛び”の秘密は「軟らかいシャフトで飛ばす」 アマチュアゴルファーでも実践できるのか? 専門家が解説
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン