ライフ

半蔵門ミュージアム【3】曼荼羅を見た壇蜜「いずれは誰しも仏になる」

『両界曼荼羅』覚仙筆 絹本着色 1706(宝永3)年

『両界曼荼羅』覚仙筆 絹本着色 1706(宝永3)年

 日本美術応援団団長で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・千代田区の半蔵門ミュージアムの第3回。2人が、奈良・東大寺の秘仏と重なる執金剛神(しゅこんこうじん)の姿に見とれる。

山下:半蔵門ミュージアムの常設展示は2つのエリアに分かれ、《ガンダーラの仏教美術》では『王の帰依と涅槃』など、2~3世紀頃のガンダーラ仏伝浮彫でお釈迦様の生涯を辿ります。

壇蜜:表情や衣の質感まで細やかに彫られています。

山下:下段で横たわるお釈迦様の足元にいるのはお釈迦様が悟りを開くのを妨げようとした魔王と娘です。

壇蜜:マーラですね。皆が悲しみに暮れる中、複雑な表情で何を思うのか……。

山下:枕辺で手を挙げお釈迦様の死を嘆くのは執金剛神。金剛杵を執って仏法を守護する神さまで、奈良の東大寺法華堂で年に1日だけ拝観できる国宝の秘仏と同じです。

 仏教美術はインドやガンダーラ=今でいうパキスタンやアフガニスタンあたりで生まれ、中央アジア、中国、朝鮮半島など諸国を経て日本へ渡ってきたもの。《祈りの世界》のエリアに展示されている『両界曼荼羅』も空海によって、中国から日本へ持ち込まれました。

壇蜜:神仏の世界が楽しそうに描かれ、仏さまがなんてかわいいのでしょう。

山下:曼荼羅は大日如来を本尊とする密教世界を無数の仏さまで表わし、「言葉では伝えられない、絵画でしか伝えられないものがある」ことを示しています。

壇蜜:曼荼羅を見れば人は死への恐怖が和らぐ気がします。神仏と同じ世界に今自分もいることが感じられて、いずれは誰しも仏になるのだと心が定まります。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)

●半蔵門ミュージアム
【開館時間】10時~17時半(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜・火曜(祝日、振替休日の場合も休館)、年末年始、臨時休館あり
【入館料】無料
【住所】東京都千代田区一番町25

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年11月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン