ライフ

名古屋遷都論の30年史 1990年代に盛り上がるも、石原元都知事が猛反対

過去には「名古屋遷都論」活発化(時事通信フォト)

過去には「名古屋遷都論」活発化(時事通信フォト)

〈国土の均衡ある発展をはかるためには、首都を名古屋市に遷都するのが望ましい〉──1987年に東海銀行(現・三菱UFJ銀行)の調査部が公表したこのレポートから「名古屋遷都論」が燃え上がった。

 当時の同行調査部長で、遷都論の仕掛け人とされた経済評論家の水谷研治氏が振り返る。

「もともとは東京一極集中の解消が必要との問題意識でした。そのために日本の人口の重心に近く、新幹線や高速道路などの交通が整備され、東部丘陵という広大な土地があり、木曽三川(木曽川、揖斐川、長良川)の水資源が豊富な名古屋を首都候補地にしました」

 国レベルでも首都機能移転の動きが活発化した。

 1990年に衆参両院が「国会等の移転に関する決議」を採択すると、2年後に国会等移転法が施行され、1996年には国会等移転審議会が発足。愛知県は岐阜県とともに首都機能の移転先に名乗りを挙げ、1999年に国会等移転審議会が「岐阜・愛知」を候補地の一つに選定した。

 にわかに現実味を帯びた遷都論に、名古屋は大いに盛り上がった。1997年に出版された『名古屋遷都理論』(中澤天童・著)では、〈名古屋遷都後は名古屋弁が標準語になり、広大な地下街が新設されて、中日ドラゴンズの人気が全国区になる〉といった“ナゴヤ・ドリーム”が熱く語られた。

 こうした動きに東京都は黙っていなかった。1999年に就任した石原慎太郎都知事は首都機能移転反対派の急先鋒となり、東京都が「岐阜・愛知に首都機能を移転したら6兆円のムダになる」と主張すれば、岐阜愛知新首都推進協議会が「5兆円の経済効果がある」と反論するなど、激しいつばぜり合いが演じられた。

 しかし、名古屋の熱意とは裏腹に全国的な世論は盛り上がらず、2000年代に入ると首都機能移転の議論が徐々に下火になった。以降、第一次安倍内閣で移転担当相のポストが道州制担当に代わり、愛知・岐阜両県が8億円以上を費やした名古屋遷都論に、事実上のピリオドが打たれた。

※週刊ポスト2021年11月19・26日号

関連記事

トピックス

4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
吉田鋼太郎と夫婦役を演じている浅田美代子(『あんぱん』公式HPより)
『あんぱん』くらばあ役を好演の浅田美代子、ドラマ『照子と瑠衣』W主演の風吹ジュン&夏木マリ…“カッコよくてかわいいおばあちゃん”の魅力
女性セブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
宗教学者の島田裕巳氏(本人提供)
宗教学者・島田裕巳氏が皇位継承問題に提言「愛子天皇を“中継ぎ”として悠仁さまにつなぐ柔軟な考えも必要だ」国民の関心が高まる効果も
週刊ポスト
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン