快進撃が止まらない藤井聡太三冠(写真/共同通信社)
「いろいろなところで言ってますけど、将棋は才能が占める割合が大きいと思っています。よく才能か努力かという議論がありますけど、僕は才能論者なんですよ。努力ができるかどうか、という性格も親から引き継ぐものですし。これは私が競馬ファンなので、そういう考えなのはあると思います。ただ人間は競走馬と違って、勉強の量や質、誰に習うかといったことを自分で選択できるので、すべてが才能で決まるとは言いませんけど」
そこで渡辺は口をつぐんだ。この論を詳細に展開すると「才能は努力を凌駕する」というニュアンスになり、未来ある子どものやる気を削ぐことを恐れているのだろう。
「運はありますよ。僕は将棋の才能があったし、父親が将棋好きで、小さい頃に出会うことができました。それはラッキーで巡り合わせに感謝しています」(全4回の第2回)
(第3回につづく)
【プロフィール】
大川慎太郎/1976年生まれ。将棋観戦記者。出版社勤務を経てフリーに。2006年より将棋界で観戦記者として活動する。著書に『証言 羽生世代』(講談社現代新書)などがある。
※週刊ポスト2021年11月19・26日号