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オリックス杉本を覚醒させた中嶋監督 25年前の仰木監督&イチローとの類似点

愛称がラオウの杉本裕太郎選手(時事通信フォト)

愛称がラオウの杉本裕太郎選手(時事通信フォト)

 2年連続の最下位、シーズン途中での監督交代。昨年の惨状から誰がこんな結果を予想できたか。ファンも評論家も「奇跡」と呼ぶオリックス・バファローズのパ・リーグ優勝。中嶋聡監督らにとっては“懐かしい景色”だったのかもしれない。この優勝を導いた監督コーチは、25年前、名将・仰木彬の薫陶を受け、そのDNAを引き継いだ者たちだった。内野の守備の要だった福良淳一がGM、救援投手として活躍した平井正史は二軍投手コーチ、切り込み隊長の田口壮が外野守備・走塁コーチで、中嶋聡監督は正捕手として仰木DNAをたたき込まれた──。(全3回の第3回)

 仰木オリックスの象徴的存在だったイチローも、陰ながら今回のリーグ優勝に深く貢献している。今年4番に抜擢され、ブレークしたラオウこと杉本裕太郎(30)は2015年ドラフト10位で入団した直後、イチローと神戸で自主トレを行なっている。

「フルスイングにこだわっていた杉本に対し、イチローは怒るのではなく、“追い込まれたら冷静に考えた打撃をしないといけない”と指導した。杉本にとって、今もその言葉は打撃の指針になっているでしょう。優勝後に『今年、(イチローの教えを)急に思い出した。それまでは全球強振。考え方が変わった』と語っていました」(オリックス担当記者)

 イチローがヒントを与えた杉本の才能を開花させたのが、中嶋氏だった。

 杉本は優勝後、日刊スポーツの取材に、ファーム暮らしが続いていた時に監督代行になった中嶋氏から「一緒に一軍行くぞ!」と活を入れられ、それが覚醒のきっかけだったと明かす。

「全部、監督のおかげ。あのままの自分だったら……。そもそも一軍の試合に出られてない。チャンスをくれた人。その恩は絶対に返さないと」

 四半世紀以上前の仰木監督とイチローが重なる。監督就任1年目、一軍に抜擢されたイチローはその日1安打を放ちながら、チームの敗戦に沈んでいた。そこで仰木監督が放った一言が、イチローの心を鷲づかみにした。

「試合の勝ち負けは俺に任せとけ。お前、二塁打1本打ったじゃないか。それでいいんだ。お前は自分のことだけ考えてやれ」

 その時のことを、イチローはこう振り返る。

「その瞬間から自分のためではなく、この人のためにやりたい、と思った。普通なら『チームのことだけ考えろ』ってなりがちだけど、『自分のことだけ考えてやれ』って。仰天しましたね」(「デイリースポーツ」2014年12月17日)

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