排泄器官に細菌が繁殖しやすく
長期の服用例が多い生活習慣病治療薬にも新たな副作用が認められた。
2019年5月には、糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬、同配合剤)の15製品(スーグラ、フォシーガ、ジャディアンス等)の副作用に「外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)」が追加された。銀座薬局代表の長澤育弘薬剤師が語る。
「2018年頃に登場したSGLT2阻害薬は、血液から糖が再吸収されるのを止め、尿として排出させ血糖値を下げる薬です。
反面、糖が多く含まれた尿が尿道を通るので、場合によっては排泄器官に細菌が繁殖しやすくなる。今回追加された副作用は陰茎や陰唇が壊死する症状です。もともと可能性は指摘されていたものの治験では現われませんでしたが、症例が報告されたことで追加されました」
SGLT2阻害薬のスーグラは昨年1月にも「ショック、アナフィラキシー」が追加された。長澤氏はこう注意を促す。
「最近、本来の治療目的ではなく“痩せ薬”としても注目されており、自費診療で処方されることがあります。そうした適用外処方での副作用は、入院や治療が必要になってもPMDAの『医薬品副作用救済制度』が適用されません」
最悪の場合、がんになるリスク
降圧剤のオルメテックOD錠(ARB)、レザルタス配合錠(ARB・カルシウム拮抗薬配合剤)には、「間質性肺炎」が副作用に加わった(2020年1月)。
「ARBは体内で血圧上昇に関わるアンジオテンシンIIの働きを阻害する薬ですが、アンジオテンシンIIには肺の機能を保護する作用があると考えられています。薬がこれを阻害することで肺を保護する機能が減弱してダメージを受け、硬くなってしまうのが間質性肺炎で、最悪の場合、がんになるリスクもあります」(長澤氏)
副作用としての「間質性肺炎」は、皮膚疾患用薬(トルツ皮下注)や漢方製剤(ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏エキス顆粒)、抗がん薬(イクスタンジ錠など)にも追加されている。これは薬の副作用リスクの存在を世に知らしめた、代表的な症状だという。
「2002年にスピード承認された肺がん治療薬は、副作用の間質性肺炎が重要視されずに盛んに処方され、多くの患者が死亡する結果を招きました。このことから、PMDAは間質性肺炎や心血管系有害事象など、特に注意すべき副作用について注意喚起に力を入れ、添付文書では赤線で囲って目立たせるなどわかりやすくしています」(谷本医師)