国内

小谷野敦氏 相馬市長の「美人会長発言」を「下劣」と断じる理由

ジェンダー論に詳しい作家・比較文学者の小谷野敦氏

ジェンダー論に詳しい作家・比較文学者の小谷野敦氏(写真/共同通信社)

 全国市長会長を務める福島県相馬市の立谷秀清市長が、連合の芳野友子会長について「美人会長」と発言(10月28日)。これが容姿に着目したセクハラだと指摘され、「軽率な発言だった」と謝罪した。

 この時代、人の外見には言及するべきではない。そう語るのが、『もてない男』(ちくま新書)の著者でジェンダー論に詳しい作家・比較文学者の小谷野敦氏だ。市長の発言を「下劣」と断じる小谷野氏に、その理由を聞いた。

 * * *
 全国市長会長が公職にある女性を「美人」と呼ぶのはマナー違反です。人間の根幹には性欲があるという逃れようのない事実があり、公の場で「美人」と言うのは“あなたに性欲を抱いている”と公言したに等しい。いわば自分の下半身を露出したようなものです。

「別にそれくらい良いじゃないか」と主張する人は、まずTPOが理解できていない。

 仮に仕事の場で、「美人ですね」「今日はキレイだね」などと言ったとします。周りに人がいたら公の場となり、言われた本人も周囲も困惑する。相手と2人きりだったら別の意味が生じてしまう。どちらにせよ言うメリットがないんです。

 どうしても「美人だ」と言いたければ、男同士で会話をすればいい。あるいはバーやクラブに行って、プロの女性を相手に言えばいいんです。

 時代はどんどん変わります。例えば落語でも、現在は娼婦と遊ぶことを題材にした「廓噺」をするのが難しくなりましたし、女性の外見を揶揄するような物語は受け入れられなくなっている。

 昔の感覚で作られたものは廃れていくものです。不朽の名作と言われる川端康成の『雪国』も、芸者とセックスして喜ぶ物語です。将来的にこうした作品の評価が見直される可能性すらあるなかで、市民の代表たる市長がああした発言をするのは、不適切と言うほかありません。

※週刊ポスト2021年11月19・26日号

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
“もしトラ”リスクも…(写真/AFP=時事)
【緊迫する中東情勢】イラン・イスラエルの報復合戦、エスカレートすれば日本にも影響 “もしトラ”リスクが顕在化
週刊ポスト