国内

「がんステージIVのママ」の最後を支えた「娘に本を遺す」ということ

2021年9月、24歳という若さでなくなった遠藤和(のどか)さんと夫の将一さん

2021年9月、24歳という若さでなくなった遠藤和(のどか)さん。夫の将一さんとは2019年12月に結婚式を挙げていた

 2021年9月8日14時11分。遠藤和(のどか)さんが、ステージIVの大腸がんとの闘病の末に息を引き取った。24歳だった。2018年、21歳でステージIVの大腸がんであると宣告を受けた和さん。真っ先に考えたのは「子供を産みたい」ということだった。

 抗がん剤治療を始めると、副作用で不妊になる場合があると告げられた彼女は、すぐに「卵子凍結」を考えた。しかし、卵子を採取するためには、抗がん剤治療の開始を遅らせなければならない。さらに妊娠した場合は、その最中に行えるがん治療の選択肢も狭まることになる。その間にがんが進行してしまうかもしれなかった。

〈治療が遅れて死ぬのは嫌だ。でも、そのまま抗がん剤治療する道を選んで、赤ちゃんを諦めるのも、ありえない。〉(遠藤和さんの著書『ママがもうこの世界にいなくても』=12月1日発売より。以下同)

 和さんは、卵子凍結を望んだ。迷いがないわけではなかったが、強い思いで決断した。家族仲のよい環境で育った和さんにとって、結婚して母になることは幼い頃からの夢だった。どうしても、子供がほしかった。夫の遠藤将一さんが振り返る。

「結婚を考えていましたが、あのときはまだ恋人でした。和からは『遠藤さんとの子供がほしい』と言われました。でも僕は、すぐに治療を始めてほしかった。何よりも和に生きてほしかったし、生きるか死ぬかの話なのに子供とか言っている場合じゃないでしょ、とも思いました。授かるかわからない子供を待つより、治療をして、自分の身体を大事にしてほしいというのが率直な気持ちでした」(遠藤将一さん)

 和さんの両親も、将一さんと同じように考えていた。和さんの母・千春さんはこう語る。

「夫は、そうでしたね。親としては目の前にいる娘が大事だから、と卵子凍結より治療を優先してほしいと考えていました。よくわかりますし、私だって全面的に賛成というわけではありませんでした。でも、ずいぶん悩んだ末に、和から『赤ちゃんを諦めたくない』と相談されたときには、一番大事なのは和の気持ちだ、と思って。あなたが希望を持てるなら、お母さんは味方になるよ、と伝えました。和の思いの強さに、夫も最後は納得して、応援すると決めました」

 和さんは、将一さんと何度も話し合いを重ねた。

「最終的には、僕も卵子凍結に賛成しました。1回だけです。もし採卵できなかったり、人工授精がうまくいかなかったときには、子供を諦めて、自分の身体の治療に専念する。和とそうやって約束しました」(将一さん)

〈私は、死ぬときまで卵子凍結を決めたことを後悔しません。やれることは全部やったと思えるのと、そうじゃないのは、全然違うから。〉

──遠藤和さんは前掲著『ママがもうこの世界にいなくても』の中でこう綴っている。

 卵子凍結を経て、和さんは2019年12月に将一さんと結婚式を挙げた。

関連記事

トピックス

3つの出版社から計4冊の書籍が発売された佳子さま(時事通信フォト)
「眞子さんにメッセージを送られているのでは」佳子さま(30)のワイン系ツイードジャケットに込められた“特別な想い”《お二人の思い出の場でお召しに》
週刊ポスト
再び頂点を掴めるのか(大谷翔平/時事通信フォト)
【MLB開幕・ドジャース連覇への道のり】早々に地区優勝を決めてもポストシーズンでの“ドジャース病”を危惧する声 ワールドシリーズで立ちはだかるのは大型補強のレッドソックスか
週刊ポスト
「W復帰」の可能性も囁かれる(時事通信フォト)
《ダウンタウン“W復帰”の可能性》浜田雅功の休養が松本人志のネット復帰計画に与える影響は?「夏頃にはコンビとしてアクションを起こすのでは」との指摘
週刊ポスト
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵容疑者(62)
【独占入手】女占い師の自殺教唆事件で亡くなった男性の長男が手記「200万円の預金通帳を取り上げられ…」「学費と生活費をストップ」、さらに「突然、親子の縁を切る」 警察に真相解明も求める
NEWSポストセブン
2023年12月に亡くなった八代亜紀さん
《前代未聞のトラブル》八代亜紀さん、発売予定の追悼アルバムの特典に“若い頃に撮影した私的な写真”が封入 重大なプライバシー侵害の可能性
女性セブン
旭琉會二代目会長の襲名盃に独占潜入した。参加者はすべて総長クラス以上の幹部たちだ(撮影/鈴木智彦。以下同)
《親子盃を交わして…》沖縄の指定暴力団・旭琉會「襲名式」に潜入 古い慣習を守る儀式の一部始終、警察キャリアも激高した沖縄ヤクザの暴力性とは
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
《男性2人に自殺教唆》自称占い師・濱田淑恵容疑者が被害者と結んでいた“8000万円豪邸の死因贈与契約” 被害者が購入した白い豪邸の所有権が、容疑者の親族に移っていた
週刊ポスト
キルト展で三浦百恵さんの作品を見入ったことがある紀子さま(写真左/JMPA)
紀子さま、子育てが落ち着いてご自身の時間の使い方も変化 以前よりも増す“手芸熱”キルト展で三浦百恵さんの作品をじっくりと見入ったことも
女性セブン
被害者の「最上あい」こと佐藤愛里さん(左)と、高野健一容疑者の中学時代の卒業アルバム写真
〈リアルな“貢ぎ履歴”と“経済的困窮”〉「8万円弱の給与を即日引き落とし。口座残高が442円に」女性ライバー“最上あい”を刺殺した高野健一容疑者(42)の通帳記録…動機と関連か【高田馬場・刺殺】
NEWSポストセブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《あられもない姿でローラースケート》カニエ・ウェストの17歳年下妻が公開した新ファッション「アートである可能性も」急浮上
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
〈50まんでおけ?〉高野容疑者が女性ライバー“最上あい”さんに「尽くした理由」、最上さんが夜の街で吐露した「シンママの本音」と「複雑な過去」【高田馬場刺殺事件】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! マイナ免許証の恐ろしい重大リスクほか
「週刊ポスト」本日発売! マイナ免許証の恐ろしい重大リスクほか
NEWSポストセブン