2人の男性から求愛されるシチュエーションなんて、ドラマではよくあることだ。でも北川景子がスーパーリッチでは、理想と現実に格差がありすぎる。我々に残されるのは、敗退の道のみ。でも江口さんは(失礼ながら)北川景子のビジュアルではない。ここ数年で美しさが増量しているのは承知だが、それでもまだ一般人と同じラインにいてくれると思う。そのささやかな共感がドラマを見ていてワクワクさせる。ミーハーな設定もいつの間にか吹っ飛んでしまう。
さらに『SUPER RICH』のヒロイン・衛は関西弁というところもまた視聴欲をそそる。ご自身が兵庫県出身ということもあって、関西弁は至ってナチュラル。聞いていて躓くこともなくなめらかで、それはまるでブルースを聴いているよう。そして流れるような慣れた関西弁は、突拍子もないことを言うシーンでも、うまく場の空気を止めている。これが標準語だと、そこで物語の進行を一旦止めてしまうことになるのだろう。
と、こんな理由から『SUPER RICH』の放送を待ち侘びている。衛が選ぶスーパーリッチとは一体何なのか。年下男子との愛なのか、会社を以前のような盛り上がりまで再建することなのか? 今後の展開をニヤニヤしながら楽しみにしている。
また江口さん自身も、来年はもっといいお芝居を見せてくれるはず。このコラムを書いていて何度か『えぐちのりこ』と変換予測をしたけれど、毎度『江口紀子』となってしまう。これがきっと来年には『江口のりこ』と自動的に出てくるようになるんだろうと、ささやかな予想を持って、本文終了。
【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。