ここに矢野進厩舎のギャロップダイナが出走したのですが、レース前のパドックでは、僕が厩務員さんと2人で引いたんです。ちょっとうるさい馬だということでしたが、この日はそれほどではなかった。これが僕の“競馬場デビュー”ってことなのでしょうか。
レースを矢野先生と一緒に見ていて「先生、ウチの馬、外から来てますよ。あれ、勝っちゃうんじゃないですか?」って(笑)。「皇帝」と言われたシンボリルドルフが歴史に残る「まさかの」負けを喫したレースですが、その一端を担っていたわけです(笑)。
17歳の3月に騎手デビュー。初勝利は4月12日にダイナパッションという馬でしたが、同期でも遅い方だったと思います。まだ右も左も分からなくて、とにかく必死にやっているだけでした。それでも1年目30勝、2年目43勝と勝ち星は伸びて、なんとかやっていけるかなと思えるようになりました。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。今年2月で騎手を引退、来年3月に52歳の新人調教師として再スタートする予定。
※週刊ポスト2021年12月17日号