見た目を気にする40代以上のミドル層
―― マンダムでは40代以上のミドル世代に向けては、「ルシード」という商品シリーズがあります。ちょいワルオヤジとはいかないまでも、中年男性でもおしゃれや身だしなみに気を遣う人も少なくありません。
西村:たとえばコンシーラーを使用することで、ミドル男性の顔肌の見た目を即時的に変え、印象を変えることができますので、「ルシード」のニーズも底堅く、堅調に推移しています。
――今後、40代以上の層に向けた商品では、化粧品というよりヘルスケアに近いような領域に打って出る可能性もありますか。
西村:日本の事業だけを考えれば今後も少子化が進んでいきますし、人生100年時代と言われる中、40代以上のミドル層の市場もまだまだ魅力的です。
長く社会で活躍していくには人からの見られ方にも気を配り、気持ち晴れやかに生きたいと考える人も多いと思いますから、われわれもエイジングに対してどうアプローチしていくか、といった観点も今後大事になってきますね。
「40代以上の男性も人からの見られ方に気を配っている人が多い」と話すマンダムの西村社長
インバウンド需要で遅れた「ビジネスモデル変革」
――競合他社との差別化ポイントは、価格戦略的な面も含めてどんな点に重点を置いていますか?
西村:商品の値付けに関しては、当社の創業者が、良品廉価ではなく「優良廉価」を普及させたいと言っておりまして、競合云々より、生活者がこの商品の価値をきちんと納得してお求めいただけるようにということでずっとやってきています。
お客様から「ギャツビーブランドだから買いたいけど、この値段じゃちょっと高いよね」と思われない価格と価値でご提供し続けていくことが大事だと考えています。
もちろん機能もさることながら、化粧品を使った時の自分の心の変わりよう、前向きになれる気持ちなども含めて楽しんでもらえることが重要だと思っています。そうした情緒的な価値もきちんと訴求し続けていく考えです。
当社の強みは、創業から90年以上男性化粧品を中心にやってきた知見や研究成果の蓄積によって、男性の身だしなみのことを知り尽くしていることにありますから、そこの深掘りには自信があります。
――ところで今年4月に社長に就任され、前社長から一気に30歳強若返ったわけですが、父親でもある元延会長と、世代交代についてはどんな話し合いをしてきましたか。
西村:私がスペイン留学から日本に戻ってきたのが2017年なのですが、その頃からいずれはという感触はありました。化粧品業界はコロナ禍前まで、インバウンド(訪日外国人)需要で活況だったわけですが、その分、ビジネスモデルの変革やデジタルの深化などは、インバウンド需要が伸びていたので後回しになりがちでした。
社内にもそういう課題への意識は強くあって、そこへの意識は会長も持たれていたのですが、今年70歳という年齢もあり、変革への思いはあっても、ジェネレーション的に実行していくところまでは難しい部分がありました。
しかもコロナ禍によって変革が前倒しで必要になってきて、化粧品業界もようやく底打ちしつつあるという中で、会長には「しんどい時代だけど、これ以上下がっていくこともないので、思い切ってやりなさい」と言われました。私自身、変革を大胆にやっていくには世の中が大きく変わっていく、いまがそのタイミングであると考えたわけです。