スポーツ

照ノ富士が語った「横綱の品格」みんなの目標であり手本となる存在

照ノ富士は「横綱の品格」をどう考える?(C)ゾルジャラガル

照ノ富士は「横綱の品格」をどう考える?(C)ゾルジャラガル

 第73代横綱・照ノ富士は、白鵬の引退で一人横綱となった重責を背負いながら、九州場所では全勝優勝で連覇を果たした。九州場所後、照ノ富士は初の著書『奈落の底から見上げた明日』(日本写真企画)を上梓した。横綱の品格について語った、その手記を公開する。【全3回の第1回】

 * * *
 新横綱として初めて迎えた本場所。国技館での初めての横綱土俵入りで、私はその大拍手を、頭のてっぺんからつま先まで浴びた。緊張しなかったが、所作の一つ一つを噛み締め、心を込めて行なう横綱土俵入り。今までの土俵入りとはまったく違う。10キロもある綱を腰に締めて行なうといった体力的な部分でも、疲労感は大きかった。

 横綱として本場所を経験して、今までと変わったと思ったことがいくつかある。ひとつは自分のなかの意識。これまでは、強くなるためだったらただひたすら何番でも稽古をしよう、トレーニングをしようと、強くなりたい一心でやっていた。責任ある行動だとか、そういうことは頭になく、とにかく強くならなくちゃいけないと、それだけだった。

 しかし、そうして努力を重ねるうちに、今は一番上の番付となった。すると、当然注目度も違うし、背負う責任も変わってくる。特に思うのが、若い子たちが自分のことを見て、自分に憧れて角界に入ってくるような、そういう地位になったのだということ。こういった気持ちが芽生えたのだ。

 今の自分は、横綱にふさわしいのだろうか。みんなが憧れる存在になれているだろうか。常に不安はつきまとう。何事もそうだが、「もうこれで大丈夫」と思ってはいけない立場なのだと、身に染みて感じている。

〈九州場所での全勝優勝後、土俵下でのインタビューで「土俵に上がると自分のベストを尽くし、全力でやるしかできない」と話した。手記のなかで横綱の品格についてこう述べる〉

 品格とは、その人の生き様であり、すべての人に理解されるものではない。よって品格を明確に言葉で表わせるものではない。人によっては、勝つことが品格かもしれない。勝負師たるもの、勝つこと前提で戦っているし、勝ってなんぼの世界なので、それはそれでいい。白鵬関を叩く人もいるが、逆に勝負師として、勝つことの大切さを学んでいる人もいるわけだから。

 自分にとっての「横綱の品格」は、すべての力士が目標としている地位であり、自分が上がった以上は、みんなの目標であり手本となる存在にならなければいけないという思いがある。上に立つ者は、下から出てきた人間に負けると、騒がれる立場にもなってくるので、覚悟と責任感を持ってやるしかないと思っている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
大谷翔平がこだわる回転効率とは何か(時事通信フォト)
《メジャー自己最速164キロ記録》大谷翔平が重視する“回転効率”とは何か? 今永昇太や佐々木朗希とも違う“打ちにくい球”の正体 肩やヒジへの負担を懸念する声も
週刊ポスト
『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)を執筆した作家・樋口毅宏氏
「元部下として本にした。それ自体が罪滅ぼしなんです」…雑誌『BUBKA』を生み出した男の「モラハラ・セクハラ」まみれの“負の爪痕”
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン