スポーツ

横綱・照ノ富士が明かす大ケガと病気 死を身近に意識した過酷な日々

九州場所は盤石の全勝優勝(時事通信フォト)

九州場所は盤石の全勝優勝した照ノ富士(時事通信フォト)

 第73代横綱・照ノ富士には、栄光の前に大きな挫折があった。2015年夏場所後、64年ぶりとなる三役2場所での大関昇進を果たしたが、大関2場所目となる2015年秋場所の稀勢の里戦で右膝の前十字靱帯損傷・外側半月板損傷。両膝に大ケガを負いながらもカド番で勝ち越しを繰り返したが、大関14場所目の2017年秋場所に5度目のカド番で負け越し。ついに大関から陥落。その後、休場を繰り返して大関経験者では初めて序二段まで番付を落とした。

 膝のケガ以上に苦しめられたのが、糖尿病だった。体調の異変に気付き始めたのは2017年の7月頃。体中がむくんで、できものができる。何をしても疲れるし、頭がグラグラする。まるで自分の体が自分のものではないような感覚だったという。初の著書『奈落の底から見上げた明日』(日本写真企画)では、挫折についても赤裸々に語られている。挫折と復活についての手記を公開する。【全3回の第2回】

 * * *
 しかし、糖尿病だけでこんなに体が痛むだろうか。動けなくなるぐらい腰も痛い。病院を4つ回った。すると、腎臓に石ができていた上、C型肝炎まで発覚した。私の内臓はもうボロボロになっていた。

 筋肉をつけるためにトレーニングをしているのに、やればやるほど筋肉が落ちていく。体中がむくんで、顔が腫れて、目が見えなくなっていく。番付を落としたくない一心で土俵に上がるが、まったく力が出ないため、勝てない。力が落ちるに比例して、気持ちもどんどん落ちていってしまった。

 医師にも「このままだと、あと2~3年しか生きられませんよ」とまで言われた。俺、もう死ぬのかな──。このとき初めて“死”を身近に意識した。気力と体力が落ちると同時に、必然的に番付も急降下していった。

〈相撲を「辞めたい」と伊勢ヶ濱親方に相談したが、「たとえ辞めたとしても、病気は治さないと長生きできない。続けたとしても活躍できない。まずは治すことを考えてからだ」と言われ、「一度しっかり休場し、病気と両膝の治療に専念しよう」と決意。ここから1年半かけた闘病生活が始まった。手記では治療中の過酷な日々と、妻のツェグメド・ドルジハンドさんの献身的なサポートぶりを綴っている〉

 落ちたら離れる人もいたが、その一方で、残って変わらず応援してくれる人もいた。その人たちのために、頑張って結果を出したい。彼らは心から喜んでくれる。そういう人たちとは今後一生の付き合いになるだろう。

 一生の付き合いになる大切な人。それは自分が悪い状況下でこそ見えてくるものだ。大切にすべき人かどうかは、自分がいいときにはわからないこと。コロナの影響で苦しい思いをしている人は多いが、落ち込んだり滅入ったりする気持ちはわかるが、マイナスのことを考えると、マイナスのことしか起こらない。

 今は一生の仲間を見つけられる大チャンス。こんなときだからこそ、前向きになることが重要だと、私は思っている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/五十嵐美弥)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン