国際情報

北朝鮮の弾道ミサイルの内情 ロシアの全地球航法衛星システムを利用か

弾道ミサイルなどの発射実験を繰り返している北朝鮮

弾道ミサイルなどの発射実験を繰り返している北朝鮮

 1月初めから立て続けに弾道ミサイルなどの発射実験を繰り返している北朝鮮。ミサイル発射の飛行経路を誘導する際に必要な宇宙衛星からの電波については、米国の全地球測位システム(GPS)のサポートが一般的だが、北朝鮮の場合、GPSの代わりにロシアの衛星航法ネットワークに頼っていることが明らかになった。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」がカナダに拠点を置く「漢和ディフェンスレビュー」のアンドレイ・チャン編集長の見解を元に報じた。

 チャン氏は「(北朝鮮などの)米国と関係が悪化している国々はいずれも米軍による妨害や干渉の可能性を懸念してGPSを使用していない。彼らは代わりに中国の衛星測位システムである北斗航法システムかロシアの全地球航法衛星システム(GLONASS)を使用している」と語っている。

 だが、北京の中国軍に近い情報筋がサウス紙に明らかにしたところでは、2020年からフル稼働している北斗システムは他国へのミサイル発射の支援は行っていないことから、「北朝鮮はミサイル発射実験で、GPSほどカバー範囲が広くないロシアのシステムを使用しているのではないか」と指摘している。

 同筋は「平壌の専門家は、中国の北斗システムとロシアのシステムを評価し、ミサイル発射の際には、地理的に高緯度に位置する北朝鮮にはロシアのGLONASSの方が適していると判断している。これは北朝鮮が1960年代からミサイル開発にソ連の設計と技術を取り入れていることと密接な関係がある。GLONASSの技術も北朝鮮に移転しているのではないか」と明らかにした。

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信によると、平壌は1月5日と11日にも極超音速ミサイルの実験を行い、金曜日には弾道ミサイルを発射。韓国の合同参謀本部は、今月4回目の発射実験として、2発の短距離弾道ミサイルのようなものを朝鮮半島東部沿岸の海上に発射したと発表している。

 今回の北朝鮮の一連のミサイル発射実験は、米国が2日にミサイル開発などに関連して北朝鮮に新たな制裁を課し、2019年以降停滞している非核化交渉に戻るよう平壌に再び呼びかけた後に行われており、北朝鮮が米国政府の対北政策に強く反発していることを裏付けている。

 北朝鮮は2017年に北米大陸の一部に到達する推定射程6000km以上の大陸間弾道ミサイル2発の発射実験を成功させた後、性能向上のために数多くのミサイル実験を行っているが、サウス紙は「これらのミサイル発射はアメリカのGPSを使わなくても、北朝鮮のミサイルプログラムが成果を挙げていることを浮き彫りにさせている」と指摘している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン