さらに岸田首相は側近たちと安倍氏の祖父・岸信介氏の政敵で岸田派(宏池会)の創設者である池田勇人・元首相を研究して政策に反映しているという。安倍政治との決別に動こうとしているのは明らかだ。『菅義偉の正体』などの著書があるノンフィクション作家の森功氏が語る。
「安倍氏は焦りを感じている。キングメーカーとして政権に影響力を振るおうと考えていたのに、岸田総理は安倍氏の提案する人事をことごとく覆したばかりか、モリカケ問題や河井夫妻買収事件を蒸し返し、これ見よがしにアベノマスクの廃棄まで決めた。安倍氏と選挙区を争うライバルの林芳正・外相を重用したのが決定的だった。
安倍氏からみると、このままでは岸田の後に林芳正政権、福田達夫政権と好ましからざる流れができかねない。そこで反岸田の菅氏に秋波を送り、安倍氏の後押しに意を強くした菅氏が派閥結成に駒を進めようとしている」
安倍氏にとって「敵の敵は味方」であり、菅氏にすれば「昨日の敵は今日の友」というわけである。2人は手を組んで安倍・菅路線の転換を図ろうとする岸田首相を共通の敵と定めた。
そうなれば党内の勢力図はひっくり返る。岸田政権を支える岸田派(42人)、麻生派(53人)、茂木派(51人)の主流3派は合計146人で自民党の衆参全議員の4割にとどまる。それに対して最大派閥の安倍派(95人)と菅氏を中心とする非主流派勢力(80人以上)が組めば過半数に迫る。オミクロンの感染が急拡大する中、自民党内の半数が敵に回れば岸田首相が厳しい政権運営を迫られることは間違いない。
※週刊ポスト2022年2月11日号