芸能

高倉健さん、田中邦衛さんを偲ぶ北海道の“聖地” 利用者増加見込めず廃線に

(時事通信フォト)

映画『鉄道員(ぽっぽや)』の舞台となった“聖地”が…(時事通信フォト)

 果てしなく続く大草原の真ん中を、単線の線路がまっすぐ延びる。その上を、電車が滑るように走っている。季節が変わり、一面の雪景色。白銀の世界を割るように進む車両は、1両編成とは思えないほどパワフルだ。北海道の大自然とのコントラストがまぶしいJR北海道の根室線。1月28日、同路線の富良野〜新得間の存続を断念し、バス転換の議論が進められることになった。

「区間の一部は2016年8月の台風被害で長らく不通の状態でした。利用人数の減少から赤字が重なっており、今後利用者の増加も見込めず、廃線がほぼ決まった状態です」(地元役場関係者)

 廃線区間内には「幾寅」という駅がある。北海道になじみのない人にとっては「幌舞」と言った方が伝わるかもしれない。高倉健さん(享年83)主演の映画『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年公開)の舞台となった“聖地”だ。

 高倉さん演じる退職間際の駅員・佐藤乙松の前に、人形を抱えた少女が現れ、駅員人生の最後が鮮やかに彩られる。直木賞を受賞した浅田次郎氏の同名小説が原作で、日本アカデミー賞の主要部門を総なめにした。当時、現地の婦人会が撮影のサポートにあたった。婦人会会長の後藤治子さんが振り返る。

「撮影が遅くまでかかることもあって、そんなときにはこの地域の家庭料理である『いも団子』を差し入れました。健さんは、無塩バターをのせるのがお気に入り。味付けの加減を間違えて、“ちょっとしょっぱいよ”って言われてしまったこともありました(笑い)」

 ベテランの映画関係者が明かす。

「健さんにとって『鉄道員』は、19年ぶりの古巣・東映復帰作。スタッフもこの作品のために再結集しました。極寒の撮影で、スタッフみんなでストーブにあたっていても、健さんだけは仁王立ちで“毎日スクワットしているから大丈夫”って笑っていたこともありました。

 健さん自身、思い入れは強かった。めったに打ち上げに来ない健さんが、このときばかりは都合をつけて参加してくれました」

『鉄道員』の秘話には事欠かない根室線だが、別の有名作品でも名場面を生んだ。廃線区間内の「布部」は、ドラマ『北の国から』の第1話で、田中邦衛さん(享年88)演じる黒板五郎が降り立った駅でもあるのだ。JR北海道に聞くと「その区間の駅舎は保存するか、取り壊すかは未定です」という。映像作品の撮影支援を行う『ジャパン・フィルムコミッション』事務局長の関根留理子さんが話す。

「ロケ地はファンの聖地巡礼などで地域活性化にも貢献してきました。大自然に囲まれた鉄道の駅というロケーションは、どこにでもあるわけではなく、貴重です。もしなくなってしまったら残念でなりません」

 それでも、“乙松さん”と“五郎”の白銀の思い出は色あせない。

※女性セブン2022年2月17・24日号

彼らをけっして忘れることはない(時事通信フォト)

「布部」は『北の国』からにも登場(時事通信フォト)

関連キーワード

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン