ビジネス

人口3000人の北海道沼田町が提起した「鉄道ルネサンス構想」は廃線危機を救えるか

北海道知内町を通過する北海道新幹線(時事通信フォト)

北海道知内町を通過する北海道新幹線(時事通信フォト)

 営業管内2400kmのおよそ半分にあたる1200kmについて、自社単独で維持していくことは困難であるとJR北海道が発表してから5年以上が経った。それ以来、バスへの転換や、列車運行と施設保有の分離などについて沿線自治体と交渉を続けている。さらに北海道新幹線の2030年度札幌延伸に伴い、並行在来線・函館本線(小樽-長万部間)のうち余市-長万部間のバス転換が決定された。その話し合いがすすめられていた一方で、北海道沼田町は2021年9月に「鉄道ルネサンス構想」と題した、北海道全体の鉄路を守るための提案を公表した。ライターの小川裕夫氏が「鉄道ルネサンス構想」が狙うものについてレポートする。

 * * *
 2016年、北海道新幹線が新青森駅から新函館北斗駅まで延伸開業した。2031年には札幌駅までの延伸開業が予定されている。貨物列車が運行するため、新幹線開業後も新函館北斗駅-長万部駅間の在来線が残ることは決まっている。しかし、新幹線と並行しない区間の今後は決まっていなかった。このほど、長万部駅-余市駅は新幹線開業と同時に廃止が確定的になり、余市駅-小樽駅も廃止の方向で議論が進められている。

 北海道は、毎年のように積雪で道路が通行止めになる。鉄道も積雪で運休することはあるだろうが、リスクヘッジの観点からも移動手段の選択肢が多いにこしたことはない。そのため、道内の市町村は交通インフラの確保に努めてきた。新幹線が開業するからといって、沿線の市町村は在来線の廃止を簡単に受け入れることはできない。

 JR北海道は線路を残したいとする自治体にも負担を求める。しかし、人口減少やコロナ禍による観光客の減少といった要因が重なり、自治体の財政は苦しい。金銭的な負担と在来線の存続を天秤にかけ、諦める市町村が目立つようになっている。

 そうした中、一石を投じた小さな自治体がある。それが北海道沼田町だ。

「北海道は第一次産業と観光業で成り立っています。鉄道は農産物などの貨物輸送にも不可欠なインフラです。また、観光客にとっても鉄道は必要です。観光なら鉄道じゃなく、レンタカーでいいじゃないかという意見もありますが、鉄道で道内を周遊する観光客は多いのです。現状を放置していたら、札幌近郊しか鉄道は残らなくなります。そんな危機感から、鉄道を残そうという声をあげました」と話すのは、北海道沼田町産業創出課JR留萌本線対策室の担当者だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン