2月10日、北京五輪での演技を終えた羽生結弦選手(写真/AFP=時事)
羽生選手はインタビューで、「でもやるべきことはやっただけなので。もう切り替えてまたフリーで頑張ろうと思ってます」と話し、反事実的思考に引きずられることのないよう気持ちを切り替えた。2月10日の男子フリーでは、4回転アクセルに挑むも転倒し4位入賞に終わったが、「全部、出し切ったっていうのが正直な気持ち。あれが僕のすべてかな」、「正直、これ以上ないくらい頑張ったと思います。報われない努力だったかもしれないけど」と、悔しさを滲ませながらも前向きな言葉を残した。だが、高梨選手は「今後の私の競技に関しては考える必要があります」と綴るほど悲嘆し、自分を責めている。
スキージャンプでは、10か国中4か国、日本、オーストリア、ドイツ、ノルウェーの5人の女子選手が失格になった。競技にベストを尽くしていた選手たちが、なぜこんな結果になったのか、戸惑いと無念、怒りを露にする選手や監督らからは、スーツ測定について「説明がなかった」「今までとまったく異なる方法で測定された」といった証言が続出。全日本スキー連盟による高梨選手への聞き取りでも、「今までのワールドカップと測り方が違った。もう一度、測り直してほしいと言ったが、聞き入れてくれなかった」と回答していたことが明らかになっている。
驚くのは、五輪という大舞台でそんな事が行われていたということだ。規定を運用する際、人が測定するので多少の誤差があるという関係者の話もある。数ミリ違うだけで失格になる競技なのに、運用ルールは厳格化されていないらしい。
ノルウェー代表のブレード・ブラーテン監督は、「少なくとも5人の選手が(通常とは)違う方法で(測定を)やっていたと話す情報がある。しかもそれを体験しているのは、彼女たちだけなのだから」と語った一方で、5人を失格にしたポーランド人判定員のアガ・ボンチフスカ氏は、「個人戦では、すべての選手がチェックされるわけではありません。逃げ切った人もいます」と述べ、自身の判断の正当性を主張したという。
公平であるべき判定が実は不透明で、不公平で理不尽という現実。五輪にはあらゆる所に魔物が潜んでいる。