スポーツ

高梨の失格、運用ルールへの疑問 北京五輪に潜む理不尽な“魔物”

ノルディックスキー・ジャンプ混合団体の1回目が失格となり、涙を見せる高梨沙羅

スキー・ジャンプ混合団体の1回目が失格となり、涙を見せる高梨沙羅選手(写真/AFP=時事)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、日本人選手の失格、棄権が相次ぎ、波乱の展開となっている北京五輪について。

 * * *
 いったい何が起きているのか!? スキージャンプの高梨沙羅選手がスーツ規定違反により混合団体で失格。フィギュアスケートの羽生結弦選手も他の選手が滑った後の氷の穴にはまりショートプログラム8位。スノーボードの竹内智香選手も女子パラレル大回転で、転倒時に相手を妨害したという不可解な判定により途中棄権扱いの敗退。さまざまな競技で、日本の選手だけでなく他国の選手にも、そんな不運が連日のように振りかかっている。北京冬季五輪には、どんな魔物が住んでいるのだろう。

 真っ黒な画像と謝罪文を自身のインスタグラムに投稿した高梨選手には、励ましのコメントが止まらない。個人戦と同じスーツを着ていたにもかかわらず失格を告げられ、1人で歩けないほど憔悴していた彼女だが、それでも2本目に見事なジャンプを飛び、着地直後に顔を覆い涙をこらえた。高梨選手の後に飛んだ小林陵侑選手が大ジャンプを見せたものの、メダルには手が届かなかった。

「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です」というメッセージが痛々しい。選手たちが互いに励まし支え合い、戦う姿に人々が心を打たれても、彼女には悔やんでも悔やみきれない事実が目の前にある。「もし違うスーツを着ていれば」と何度も思ったのではないだろうか。

「今日のミスは自分ではどうこうしようのないところだった」と話した羽生選手も、荒川静香さんのインタビューでは「今考えると、あと1センチ(ジャンプの場所を)ずらしておけば」と語った。その言葉には、後悔の念がわずかに滲む。人はミスや失敗を悔やむ時、「もし違った行動をしていれば」、「違う選択をしていれば」と考えてしまうものだ。これを「反事実的思考」という。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン