1985年10月、千葉・成田市の三里塚交差点。過激派の火炎瓶攻撃で炎上する警察の放水車(時事通信フォト)

1985年10月、千葉・成田市の三里塚交差点。過激派の火炎瓶攻撃で炎上する警察の放水車(時事通信フォト)

 2021年末のマクドナルドのフライドポテト不足の際も同社はポテトを空輸した。アマゾンも高単価、かつ急ぎの場合は航空便だ。成田空港の貨物量は過去最大、日本航空も専用貨物機を共同運行するという。いちはやく貨物機ビジネスにシフトした大韓航空はコロナ禍の乗客離れをよそに過去最高を記録、日本も遅ればせながら生き残りを賭けて動き始めている。しかしC滑走路は2028年末の供用を目指すという、時間も掛かる上に件の反対派住民と関係ない箇所に伸ばすので規模は期待できそうにない(国土交通省の計画図を見る限り、既存滑走路と並行に設置できていないのも不安)。米中韓との空港格差はさらに広がりそうだ。

 日本は世界の20位にも入らない小さな港ばかりの「海洋国家」になって久しい、しかしそれ以上に空港はお粗末で、みなさんご存知の通りの規模、世界的に小規模な空港が点在している。ハブ空港として集約もできず、政治利権のために一日何本も飛ばない田舎の空港を作りまくった。鳴り物入りだった茨城空港などコロナ禍の2021年、ついに国際線がゼロとなってしまった。

「やっぱり成田なんです。羽田や関空もありますけどやはり国際便のメインとしては限定的です。成田はとても設備がいいし信頼できます。だからこそなんだかんだで踏みとどまってるんだと思います。貨物機や空港の方々には感謝してます」

 成田空港はSKYTRAXの「世界で最も清潔な空港」で1位となった。確かに筆者はコロナ以前の旅行だけでなく、コロナ禍にもたびたび取材で成田空港を訪れているが、世界でこれほど綺麗な空港を見たことはない。はっきりいって各国のハブ空港は大きく立派だがいろいろと汚い。それぞれのお国柄もあるのだろうが、成田空港のように美しい空港が当初通りの大空港、発展してハブ空港になっていたなら、と思うと残念でならないし、事情は十分知ってはいるが成田闘争の結果的な無意味さ(世界的にも住民交渉の失敗による国家の損失という点で研究されている)がもったいない。また先に取り上げたACIのランキングだが、おそらく他社の調べを見る限り2021年分では成田空港はトップ10に返り咲くだろう。それほどまでに成田空港の貨物取り扱いは好調だ。

 コンテナ船の取り負けに起因する部分もあるので素直に喜べないし、この流れが進むと高コストの航空便、さらに値上げラッシュとなるだろう。それでも貿易という戦争を勝てないまでも防戦するには空港や航空各社に対するよりいっそうの国家的バックアップが必要だ。何でも安く手に入るのが当たり前、という染みついた国民意識もみんなで変える必要がある。それが貿易や物流の現場という最前線で戦う日の丸企業戦士たちに対する私たち銃後の消費者の務めだと思う。

 何度も書くが、ロジスティクスの軽視こそ敗戦、亡国の導因であることは歴史が証明している。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)ジャーナリスト、著述家、俳人。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題や生命倫理の他、日本のロジスティクスに関するルポルタージュも手掛ける。

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