ライフ

女性プロゲーマー炎上 「近頃よく見かける話」をどう捉えればいいのか

(イメージ)

炎上の影響は大きくなっている(イメージ)

 誰もが発信者となれる一方で舌禍事件は跡を絶たない。大人力について研究するコラムニスト・石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 かばうつもりは毛頭ありません。失礼で無神経で不用意な発言だったと思います。今回の件で初めて名前を知ったので、元々どういうキャラだったかとか、プロゲーマーとしての評価とか、そのへんをどうこう言う資格もありません。

 はい、ほかでもなく、人気プロゲーマーの女性が大炎上した件です。その彼女は2月15日夜に行なった生配信中で、身長の低い男性や胸の小さい女性を侮辱する発言を連発。たちまちネット上は大騒ぎになります。あわてて謝罪コメントを出しますが焼け石に水で、17日には所属チームをクビになるなど大きな社会的制裁を受けることとなりました。

 言ってみれば「近頃よく見かける話」です。でも、なんかスッキリしないというか、ノドの奥にザラザラしたものが残る感じは何なんでしょう。いや、しつこく念を押して恐縮ですが、けっして彼女をかばいたいわけではありません。

 ノドの奥のザラザラの正体を探るために、この出来事をどう捉えればいいのか、立場を変えつつ考えてみましょう。

その1【発言を知って「絶対に許せない!」と正義感にかられて行動した人として】

 基本的な立場〈ネットに流れてきた「身長170㎝ない男は人権がない」という発言は、どっからどう見てもケシカラン。どういう流れで言ったかは関係ないし、知る気もない。批判されて当然だから、自分も批判する。身長で人を差別するな! 人権は誰にでもある! 謝罪しろ! 引きずり下ろせ! そんなことをいうヤツに人権はない!〉

 おそらく、ネットで批判の声を上げている人の多くは、おおむねこの立場かと推察されます。正義を背負って遠慮なく誰かを罵倒するのは、さぞ楽しくて気持ちいいことでしょう。癖になって、次から次へとターゲットを探したくなる気持ちも、よくわかります。

その2【こういう世の中だから批判を受けるのは当然だとしたり顔をする人として】

 基本的な立場〈群がって批判しているヤツらは、ソーシャルゲーム界隈での「人権」という言葉のニュアンスがわかっていない。しかし、ネットで言葉が独り歩きしてしまう状況では、あの発言が批判されるのは仕方ない。所属チームやスポンサーも、盛り上がりかけているeスポーツのイメージダウンを防ぐために、あわててクビにするのは当然だ〉

 賢明な自分は脊髄反射で獲物に群がっているヤツらとは違う、という顔をしつつ、状況分析に精を出します。結局その発言をどう思うのか、自分の判断は示しません。というか、世の中の価値観や雰囲気を的確につかむことこそが「自分の判断」だと思っています。

その3【騒動を横目で眺めつつ何はともあれ今の時代を嘆くのが大好きな人として】

 基本的な立場〈渦中の人物がどういう人かは知らないしとくに興味はないが、ひとつの発言ですべてを失ってしまうなんて、怖い時代になってしまった。まさにネット社会を象徴する出来事である。あの発言が背の低い男性の人権を本気で侵害していると、誰が思ったのか。本当の意味での多様性とは、寛容とは何だろう。ああ、嘆かわしい……〉

 何が起きても、とにかく「今の時代」を嘆こうとします。そうすることで「しっかり考えながら生きている自分」を確認して悦に入っていますが、ヒマつぶし以上の意味はありません。さっきの「したり顔をする人」と両立しているケースも多々あります。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン