国際情報

「酒」と外交 プーチン氏と側近が大喜びしていた日本政府からの贈り物

かつて安倍氏は日本酒をふるまったが(写真/EPA=時事)

かつて安倍氏は日本酒をふるまったが(写真/EPA=時事)

 外交交渉にあたって、首脳同士が個人的な関係を深めるために、「酒」を酌み交わすことがツールになってきたことは過去にも数多くある。それによって成果が得られたこともあるが、今まさにウクライナ侵攻で世界を恐怖に陥れているロシアのプーチン政権との関係構築にあたって、日本政府の枢要にあった政治家がどんな姿勢を取り、どんな贈り物をしてきたかは、検証されてしかるべきことではないだろうか。

 過去に“酒の席”での話が、外交交渉にあたって一定の役割を果たしたとして語り継がれてきたエピソードは複数ある。ベテラン政治ジャーナリストはこう話す。

「1972年の日中国交正常化交渉を巡っては田中角栄首相が、周恩来首相から人民大会堂に招き入れられてマオタイを酌み交わしたことが知られていますし、ソ連との領土交渉に際しては、下戸であったという当時の河野一郎農相がフルシチョフ氏(ソビエト共産党第一書記)を前にウォッカを飲み干したというエピソードも関係者の間で語り継がれてきました」

 そうした“伝統”があるからか、プーチン政権との外交交渉にあたっても、日本政府の重要ポストを担う政治家たちは「酒」を意識してきたフシがある。

「2016年に来日したプーチン氏に対し、当時の安倍晋三首相は地元である山口県長門市の高級老舗温泉旅館『大谷山荘』で手厚くもてなしました。その際には、萩市の酒造場がつくる日本酒『東洋美人 壱番纏』を振舞って好評を博した。

 また、プーチン氏の側近であるラブロフ外相は大のウイスキー好き。それゆえ、2019年の外相会談では、当時の河野太郎外相が日本産のウイスキー『響』の17年ものをプレゼントしている。河野外相は、自身がフルシチョフの目の前でウォッカを飲み干した河野一郎氏の孫であることも意識していたのではないか。同年11月に河野氏から外相を引き継いだ茂木敏充氏(現・自民党幹事長)も、同様にラブロフ氏に『響』をプレゼントしているから、贈り物は好評だったのでしょう」(前出・政治ジャーナリスト)

 ロシア人には、ウォッカなど強い酒を好んで飲むイメージがあるが、こうした贈り物は、安倍氏のもとでなんとかロシアとの関係を改善して、北方領土交渉を進めようとするなかでの“外交努力”であったと考えられる。しかし、ウクライナ侵攻によってロシアが国際社会からの批判の集中砲火を浴びる状況下では、日本側にとって“消したい過去”にもなるのだろう。

関連記事

トピックス

小磯の鼻を散策された上皇ご夫妻(2025年10月。読者提供)
美智子さまの大腿骨手術を担当した医師が収賄容疑で逮捕 家のローンは返済中、子供たちは私大医学部へ進学、それでもお金に困っている様子はなく…名医の隠された素顔
女性セブン
吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
北朝鮮の金正恩総書記(右)の後継候補とされる娘のジュエ氏(写真/朝鮮通信=時事)
北朝鮮・金正恩氏の後継候補である娘・ジュエ氏、漢字表記「主愛」が改名されている可能性を専門家が指摘 “革命の血統”の後継者として与えられる可能性が高い文字とは
週刊ポスト
英放送局・BBCのスポーツキャスターであるエマ・ルイーズ・ジョーンズ(Instagramより)
《英・BBCキャスターの“穴のあいた恥ずかしい服”投稿》それでも「セクハラに毅然とした態度」で確固たる地位築く
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「箱わなで無差別に獲るなんて、クマの命を尊重しないやり方」北海道・知床で唱えられる“クマ保護”の主張 町によって価値観の違いも【揺れる現場ルポ】
週刊ポスト
火災発生後、室内から見たリアルな状況(FBより)
《やっと授かった乳児も犠牲に…》「“家”という名の煉獄に閉じ込められた」九死に一生を得た住民が回想する、絶望の光景【香港マンション火災】
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン