ライフ

過激化するキャンセルカルチャー 処分を短絡的に決めてしまってはいないか

『ハリー・ポッター』シリーズの作者 J・K・ローリングさんは、ジェンダーを巡る発言でたびたびネット炎上している(AFP=時事)

『ハリー・ポッター』シリーズの作者 J・K・ローリングさんは、ジェンダーを巡る発言でたびたびネット炎上している(AFP=時事)

「キャンセルカルチャー」とは、特定の対象の言動などを取り上げ糾弾し、排除や排斥、追放やボイコットしようとするムーブメントのことだ。それは現在の行いだけでなく、過去に遡って問題にされ、不買運動をしたり辞任させたりなど、社会的制裁を積極的に求めるのがネット炎上と異なる。SNSによってこの動きは拡大している。キャンセルカルチャーはなぜどのような時に起きるのか。ネットやSNSの問題に詳しい成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんに聞いた。

 * * *
 あるアーティストのファンだったという人は語る。

「過去にひどいいじめをしていた言い逃れようがない証拠が出てきて、すごく残念だった。大きな仕事から降ろされただけでなく、アルバムも白紙になってしまい、作品自体は何も変わらないのに、もう純粋に楽しめなくなった。ただ、テレビとかで連日糾弾されていて、気の毒にも感じた」

 著名人による問題ある言動が取り沙汰されたが最後、それまでの活躍や能力などに関係なく徹底して叩かれ、社会的に葬り去られることが増えてきた。

 キャンセルカルチャーとはこのように、主に著名人などの過去の犯罪や不祥事、不適切な発言などを掘り起こし、それを元に批判し、社会的地位を失わせるなどして排斥する現象のことだ。数年あるいは数十年前の言動でも対象となり、一度問題視されれば、謝罪するか社会的地位などを失うまで糾弾され続ける。

 SNSやネットの過去の発言などが掘り起こされて起きることも多く、ソーシャルメディアが普及した2010年代後半から増えたと言われている。また、以前から見られた、大勢の前でミスや誤りなどを糾弾するさらし行為、「コールアウト・カルチャー」の一つとされる。

オリンピックで続いたキャンセルカルチャー

『ハリー・ポッター』シリーズで知られる作家のJ・K・ローリングさんは、2020年6月、複数回にわたりTwitterでトランスジェンダー差別だと受け取れる発信をしたとして、繰り返し批判を集めていた。SNS上の過去の言動から、トランスジェンダー排斥をする人物なのではないかという疑惑が浮上していたタイミングだったこともあって非難の声がおおきくなったのだが、謝罪しても責任を問う声は収まらなかった。これもキャンセルカルチャーの一つと言われている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ラオスご訪問に向けて準備をされている様子が公開された(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン