東京オリンピックでも、同組織委員長だった元首相の森喜朗さんが女性蔑視発言で辞任に追い込まれている。森さんは、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」「組織委員会に女性は7人くらいおりますが、皆さんわきまえておられて」などと発言し、国内外から批判を集めた。
また同じくオリンピック開会式で作曲者の一人だった小山田圭吾さんは、1994年に発行された『ロッキング・オン・ジャパン』、翌年の『クイック・ジャパン』に掲載されたインタビューが元で、辞任することになった。小山田さんはインタビュー中で障害者をいじめていたことを自慢げに告白しており、障害者をいじめた人物がパラリンピックに関わることを問題視されていた。
今年2月には、「CYCLOPS athlete gaming」に所属するプロゲーマー「たぬかな」選手が、不適切発言によって契約解除された。たぬかなさんは生配信の中で男性の身長について話題が移ったとき、「165はちっちゃいですね。だめですね。170はないと、正直、人権ないんで。170センチない方は、『オレって人権ないんだ』って思いながら生きていってください」などと発言し、批判を集めていた。
どの場合でも共通するのは、発言などから激しく糾弾され、役職や仕事、契約など社会的地位を失っていることだ。
#MeToo運動から派生して誕生
キャンセルカルチャーは、「#MeToo」運動から派生したと言われている。私も(MeToo)受けた過去のセクハラや暴力をシェアし問題を考える、という米国での#MeToo運動は、もともと2007年に性暴力被害者支援のスローガンとして提唱されたものだったが、2017年に大物映画プロデューサーハーヴェイ・ワインスタインのセクハラや性的暴行に対する集団告発をきっかけに世界に広まった。ワインスタインは2018年5月に逮捕され、2020年には有罪が確定、23年の禁固刑が言い渡されている。
SNSが普及したことで一般人でも声を上げられるようになり、人々の声が社会を動かし、弱者を救済するなどの大きな力を持つようになった。キャンセルカルチャーと言われると、過剰に罰を与える負の側面のイメージがつきまとうが、これまでは封じ込められてしまった問題が明るみに出やすくなるなど、ポジティブな面もあるのだ。
やはり一方で、キャンセルカルチャーは過激化し、その結果、言論の自由をなくし、分断を生んでいるとも言われている。