国際情報

ゼレンスキー氏の国会演説 日本の“察する文化”意識した巧みな手法

ウクライナのゼレンスキー大統領をサポートする人たちとは(Ukrinform/時事)

日本の国会で演説を行ったウクライナのゼレンスキー大統領(Ukrinform/時事)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、国会で行われたウクライナのゼレンスキー大統領の演説について。

 * * *
 どのような言葉で、どんなエピソードを盛り込み、どのようなメッセージを伝えるのか。世界中で話題となり、注目を集めてきたウクライナのゼレンスキー大統領によるオンライン演説が3月23日夜、日本の国会でも行われた。オンライン演説を行うことは、日本が支援していることを内外を問わず示す1つの方法でもあるのだろう。

 なぜ世界がウクライナの現状を気にかける必要があるのか、なぜ彼の話を聞くべきなのか、という問いがあるとすれば、ゼレンスキー氏はそれに対する答えを明確にしている。国会での演説でもその答えはあった。冒頭で「この戦争が終わらない限り、平和がない限り、安全だと感じる人はいないでしょう」と述べている。そして「ウクライナのため、世界のため、世界が将来、明日のために自信が持てるように。安定的で平和な明日がくると確信できるように」と述べた。

 人が注意を払うのは、基本的に自分や家族、友人知人に関係する時だ。見て終わり、聞いて終わりにならないよう、当事者意識を喚起すべくゼレンスキー氏は、「あなたたちの平和もこのままでは脅かされるかもしれない」と暗示し、自分がどうするべきか自問するよう促している。ウクライナの平和は世界の平和であり、あなたの行動が状況を変えられると思わせ、より良い方向に進もうと働きかけているのだ。

 多くのメディアがスピーチ戦術について分析しているが、ゼレンスキー氏の演説には、その国の歴史的背景や文化を踏まえ、国民に伝わりやすく共感を持ってもらえるような工夫がなされている。

 3月16日の米議会での演説では、1941年の真珠湾攻撃と2001年の9.11同時多発テロに言及。17日のドイツ議会では、欧州の現状をベルリンの壁に例え、20日のイスラエル国会でも、ナチスドイツによるホロコーストを引き合いに出しウクライナへの支援を求めた。

 ウクライナが置かれている状況を頭で理解させるだけでなく、心でも理解してもらうため、その国が経験してきた出来事を効果的に使って共通項を提示する。だが同時に、イスラエルには「ロシアに強力な制裁を科さないのか」と問い、ドイツには「経済関係を深め戦費を稼がせた」と批判した。

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン