ゼレンスキー大統領を支える「22人の精鋭閣僚」
妻は「脚本家」
グレンコ氏は、現在の閣僚はウクライナの歴史のなかでも異質だと語る。
「ゼレンスキー政権以前は政治経験のある〝政治のプロ〟が閣僚を務めることが大半だったが、現在はほとんどいません」
そうしたなか、いま最前線に立っているのが外相のドミトロ・クレバ氏と国防相のオレクシイ・レズニコフ氏だ。
「元弁護士で国家運営にも詳しいレズニコフ国防相は、ロシアとの停戦交渉を担う代表団の1人。外交官出身のクレバ外相は戦争が始まってからもロシアのラブロフ外相と会談し、記者会見ではウクライナの立場を積極的に世界に発信するなど、外交のプロとして手腕を発揮しています」(同前)
閣僚のトップに立つデニス・シュミハリ首相は州行政府の官僚を務めた後、冷凍食品会社のCEO、州知事などを経て首相になった。ただし、首相以上に目立つのは国際ジャーナリストの山田敏弘氏が「ゼレンスキーの右腕」と評する副首相兼デジタル転換相のミハイロ・フェドロフ氏だ。
「ウクライナがロシア相手に繰り広げるサイバー戦を率いる人物で、選挙戦の時からゼレンスキー氏にSNS戦略をアドバイスしていました。広告会社を起業したキャリアがあり、31歳にしてどうすれば大衆に情報が届くかを熟知している。ロシアの侵攻後、イーロン・マスク氏(米テスラCEO)に衛星通信システム『スターリンク』の提供をツイッターで依頼し実現させたのも、彼の実績です」
ゼレンスキー氏は昨年、経済・貿易・農業発展相とインフラ相、保健相を同時に解任しており、人事の力で組織を動かそうとしてきたことが窺える。
女性の副首相は3人いるが、山田氏が注目するのは暫定支配地域相を兼務するイリナ・ベレシュチュク氏。国立大学の軍事研究所で学んだ弁護士でウクライナ軍の将校を5年務めたこともある、異色の経歴の持ち主だ。
「2021年に閣僚に就任しましたが、それ以前(2010~2015年)にナバルスカ市の市長を女性最年少で務めました。元軍人という経歴があるからか、タカ派的な発言が話題になったことがあります」