芸能

ウィル・スミス「平手打ち」の裏にあった根深い嫉妬と確執

つかつかと壇上に上がったスミス(AFP=時事)

つかつかと壇上に上がったスミス(AFP=時事)

「ドライブ・マイ・カー」の国際長編映画賞受賞もかすんでしまったウィル・スミス平手打ち事件は、94回目を迎えた歴史と権威を誇るアカデミー賞に大きな汚点を残してしまった。どうやら事件の背景には加害者、被害者となった2人の黒人スターの積年の確執があるようだが、まずは事件現場を改めて再現してみよう。

 第94回アカデミー賞授賞式には、映画界のセレブら2500人が招待され、米国内でABCテレビ中継を見た人は1540万人、全世界がツイッターなどSNSで見守った。開始から2時間後、長編ドキュメンタリー映画賞のプレゼンターとして登壇したのは黒人コメディアンのクリス・ロック(57)。エディ・マーフィーの付け人を経てテレビに出始め、人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」の常連となって2016年アカデミー授賞式では司会も務めた人気者だ。その芸風は、人をおちょくる辛口ジョーク。

 会場の前列に座っていた主演男優賞にノミネートされているウィル・スミス(53)と妻のジェイダ・ピンケット・スミス(50)をチラチラ見ながら開口一番、毒を吐いた。

「ジェイダ、好きだよ、『G.I.ジェーン』の続編を早く見たいもんだ」

『G.I.ジェーン』(1997年)は、坊主刈りにしたデミ・ムーアが米海軍特殊部隊に挑む女性将校オニール大尉を演じた戦争映画だ。ジェイダは、ここ数年脱毛症に苦しみ、今は丸坊主にしている。ロックはいつものように、人の嫌がることをあえて持ち出し、笑いを誘おうとしたのだろう。

 ジェイダは不快な表情を見せたがそのまま目を閉じた。ところが、隣に座っていたスミスはやにわに席を蹴ってステージにつかつかと上がると、腕組みしてニヤニヤしているロックに強烈な平手打ちを食らわせた。体が大きく傾くほどの衝撃だったが、ロックはこれが余興のドッキリだと思わせようとしたようで、「ウォ、こりゃ痛いわ」とおどけてみせた。

本当に痛そう(AFP=時事)

本当に痛そう(AFP=時事)

 スミスがすぐに席に戻ってからも、「おお痛かった。ウィル・スミスの野郎が平手打ちを食わしやがったよ」と自ら解説。しかし、スミスのほうは激情を隠そうともせず、「俺の妻の名前をその薄汚い口で呼ぶんじゃねえ!」と叫ぶ。ロックは、「おやまあ、このしゃれ男。俺はジョークを言っただけなのに、そうカリカリしなさんな」と平静を装い、「さて、続けていいかい?」と、その場をなんとか取りまとめた。

 このハード・アクションは20秒足らずの出来事で、ABCは「放送禁止用語」とみなしてすぐさま音声を消したが、ツイッターなどは抑えられない。ハリウッドで5指に入る黒人大スターとお笑い芸人の醜いやり取りは世界中に実況中継された。数分間のコマーシャルの間に周囲は必死に両者をなだめ、スミスには重鎮のデンゼル・ワシントン(67)が歩み寄り、「人生最高の瞬間に悪魔は忍び寄るものだ」と諭した。

ロックはスミスの剣幕に呆然の様子(AFP=時事)

ロックはスミスの剣幕に呆然の様子(AFP=時事)

 それから式は何事もなかったかのように進み、スミスは主演男優賞に輝く。受賞の挨拶では平手打ちのことも詫びたが、もちろんツイッターは、受賞のことより「どっちが悪いか」で大論争になっていた。それにしても、なぜスミスはいきなり殴ったのか。ハリウッドを長年取材してきた黒人ベテラン記者は、「いきなり」ではなかったと明かす。

関連記事

トピックス

志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日のなかベビーカーを押す海外生活》眞子さん、苦渋の決断の背景に“寂しい思いをしている”小室圭さん母・佳代さんの親心
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
原付で日本一周に挑戦した勝村悠里さん
《横浜国立大学卒の24歳女子が原付で日本一周に挑戦》「今夜泊めてもらえませんか?」PR交渉で移動…新卒入社→わずか1年で退職して“SNS配信旅”を決意
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン