深夜までかかって一気に読んだという田中真琴
和さんの夫の将一さんが素敵すぎて! 何年か付き合って、結婚を考えたタイミングで相手にがんが発覚したら、少しくらい迷うと思うんです。でも、将一さんは「一緒にいる」「大丈夫だから」と即答でした。これほどストレートな言葉で安心させてくれる人、いるでしょうか? 何がここまで彼を動かしたんだろう、それをずっと考えさせられています。
がんがステージIVとわかっても、将一さんの気持ちは変わりませんでした。それもすごいことだと思います。いずれは、彼女不在で彼女のご実家とコミュニケーションを取らなければならないでしょうし、彼女と過ごした時間よりも、彼女のご実家のご家族と過ごす時間のほうが長くなるかもしれない。
「結婚」ということを考えたときに、私も、これから出会うであろうパートナーも、そこまでの覚悟が持てるかな、と考えさせられました。
一方で、私も和さんと同じように「ママになりたい」と強く願っています。結婚願望よりも、そっちのほうが強いくらいです(笑い)。なんで? と聞かれると……理由を説明するのは難しいですね。でも確かに、自分の中にそういう気持ちが存在するんです。
抗がん剤治療の開始を延期して、卵子凍結に臨んだシーンはとても印象に残りました。がんとは関係なく、自分の選択肢にもなりえると感じて、けっこう熱心に調べました。
和さんがステージIVのがんを患いながら娘さんを生んだことに対して、「無責任」などといわれのない批判があったそうですね。夫婦の問題とは思いながら、私も「子供はすごく欲しいけれど、自分ががんになったとして、抗がん剤をやめてまで望むだろうか」と自問自答していました。
でも「和を喪ったいま、そばにいてくれる娘が、どれだけ僕の救いになっているか」という将一さんの言葉に、はっとしました。いまでは、自分が亡くなるとわかっていたとしても、パートナーがいたら、遺されるほうのために子供を生みたい、そういう気持ちを持つようになりました。
和さんが亡くなってしまったのは悲しいことだけれども、悲しいだけで終わらせたくないと感じています。例えば、15~39才の「AYA世代」のがん患者さんへのサポートが、ほかの世代と比べて充実していないということを今回初めて知ったので、何か力になれないかとか。同世代の人に、定期健診の大切さを訴えていきたいとか。彼女の思いを知ったから、自分もやるべきことがあるのではないか、できることがあるのではないかと考え続けています。
◆田中真琴(たなか・まこと)
女優。1995年京都府生まれ。「2014年度ミス佛教大学」でグランプリに選ばれる。出演は「あざとくて何が悪いの?」(テレビ朝日系)、「マヂカルクリエイターズ」(テレビ東京系)など。2022年4月15日スタート『インビジブル』(TBS系)に出演予定。
『ママがもうこの世界にいなくても』を手にする田中真琴