違法薬物で逮捕された芸能人の中には、あっさりと仕事に復帰する例もあるが、性スキャンダルの場合はなぜ復帰が容易でないのか。ベテラン芸能記者の石田春男氏は、こう分析する。
「いささか乱暴な理屈ですが、違法薬物には明確な被害者が存在しないのは大きいでしょう。罪状によっては実刑を食うこともある重大犯罪なのに、『プレッシャーから逃れたかった』『人気が落ちて辛かった』『疲れが吹っ飛ぶと言われて…』といった言い訳が同情を買うケースさえあります。
しかし性スキャンダルの場合、被害者がいるケースがある。その場合、たとえ罪を償ったとしても、被害者のトラウマは一生消えないわけで、世間から同情されたり理解されたりする余地はゼロ。いくら『深く反省しています』と言い訳しても、他人の尊厳を踏みにじる行為をした人間を許すほど世間は甘くありません。
もう1つ大きいのがスポンサーの存在。スポンサーは、性スキャンダルを起こした人間を使うことは到底許容できないでしょう。近年は視聴者の目が極めて厳しくなっており、問題を起こした芸能人を起用すると、当該人物のみならず制作関係者にも火の粉が降りかかり、さらにスポンサーにもクレームが行きます。そもそも芸能界で活躍したいと願う人間など山ほどいるのに、わざわざリスクがある人間を使う理由はありません。性加害の告発がこれだけ続くなかで、そうしたムードは一層強まっています」(石田氏)
現時点で告発の対象になっているのは映画界の人間ばかりだが、テレビ局や音楽業界でも似たようなことをやってきた人物がいるとの証言も出てきている。海の向こうでは「#Me Too」が大きなうねりとなったが、日本の芸能界も数年遅れでその動きが本格化することになりそうだ。