そんな滝崎氏に関する奇妙な記事が、日本経済新聞(3月25日付朝刊)に出た。キーエンス財団に保有している自社株、745万株、時価3900億円相当を寄付したという内容だ。経済ジャーナリストの有森隆氏はこう言う。
「3段見出しの大きな扱いでしたが、日経は前日(3月24日朝刊)にも寄付の件は報じていました。ただし前日に報じた内容が違っていたという訂正が含まれており、それが目立つように配慮した上で改めて正確な内容を報じたのでしょう。前日の記事では保有株を寄付した先を滝崎氏の不動産管理会社としたが、キーエンス財団の誤りだったということでした。
この訂正に滝崎氏のこだわりを見た気がします。
滝崎氏は2016年、この不動産管理会社の株式を長男に贈与したことをめぐって1500億円の申告漏れを指摘されたことがある。寄付先が不動産管理会社だとして変な誤解が広まると困るから、しっかり訂正したかったのではないでしょうか」
キーエンスに聞くと、「個人のことに関しましては、会社としてのコメントは差し控えさせていただきます」(経営情報室)と回答。日経新聞広報室は「同社からのご指摘で誤りが判明したため訂正しました」と答えた。
目立たぬよう徹する姿勢がこの経営者の最大の個性と言えよう。
※週刊ポスト2022年4月29日号