精神科で処方される睡眠薬や抗不安薬も日常生活に支障をきたすような副作用が出る場合がある。松田医院和漢堂院長で日本初の「薬やめる科」を開設した松田史彦さんが言う。
「原因不明の手の震えに悩んでいた30代の女性患者がいて、服用中の薬を洗い出したところ、うつ病の治療に使われる『アリピプラゾール』に行き当たりました。この薬は急にやめると危険なため、慎重に対応してゆっくりと服用をやめていきました。すると震えは消失。この薬は主な副作用として手足の震えが報告されているのです」
在宅医療で患者と向き合いながら減薬に取り組む、たかせクリニック理事長の高瀬義昌さんは特に高齢者への影響を懸念する。
「年を重ねると不眠に悩む人が増え、睡眠薬を処方されることが多いですが、なかでもベンゾジアゼピン系の薬は危険度が高い。副作用でふらついてそのまま転倒し、大腿骨頸部骨折で寝たきりになってしまう患者もいる。同じく高齢者に処方されやすい三環系の抗うつ薬も、副作用が出やすいことで有名です。認知機能が落ちたり、喉がかわいたり、尿が出なくなることがあります」(高瀬さん)
うつや過活動膀胱の治療に使われる抗コリン薬で、認知機能が低下するケースもある。
「アルツハイマー型認知症は脳内の『アセチルコリン』と呼ばれる神経伝達物質が少なくなることで発症する病気です。抗コリン薬にはこのアセチルコリンの働きを抑える作用があるため、認知機能が落ちてしまう。複数の病院にかかっていると、副作用に気がつかないまま処方してしまっていることが多いのです」(高瀬さん)