横山:今で言うマーケティングを、しっかり行なっていたんですね。
橋:そう。吉田先生にしてみれば、それまではフランク永井さんや三浦洸一さんといった大人の歌手ばかりに楽曲を提供していたところに、いきなり17歳の若者が現われたものだから、実験精神に火が点いたんでしょうね。
横山:『葉山ツイスト』など、僕らのバンドにおける昭和にワープのヨコワケハンサムな楽曲は、橋さんのリズム歌謡の存在がなければ、決して生まれませんでした。
橋:新時代に、僕の遺伝子を継いでくれる後輩が現われてくれたことは、本当に光栄に感じています。
横山:作詞の佐伯孝夫さん、作曲の吉田正さん、歌手の橋幸夫さんという組み合わせは、『潮来笠』もリズム歌謡も一緒。今聴くと、同じ作家が書いたとは思えません。作風の幅が広すぎる(笑)。
橋:ええ、さすがですよ。
(第2回へ続く)
【プロフィール】
橋幸夫(はし・ゆきお)/1943年、東京都荒川区生まれ。1960年に『潮来笠』でデビューし、日本レコード大賞新人賞を受賞。『いつでも夢を』、『霧氷』で2度の日本レコード大賞受賞。現在、“最後のコンサートツアー”で全国を回っている。
横山剣(よこやま・けん)/1960年、横浜出身。1981年にクールスRCのヴォーカル兼コンポーザーに抜擢されデビュー。1997年春、地元本牧にてクレイジーケンバンド結成。これまでに数多くのアーティストにも楽曲を提供している。
構成/下井草秀 撮影/内海裕之
※週刊ポスト2022年5月6・13日号