──芸人さんはお話が上手なので、接客業や営業に向いているイメージがあります。
松尾:そこは正直、人によります。芸人さんってすごく変わった人も多いですし……。でもどんなに大変でも、芸人のセカンドキャリアに関する事業はやりたいし、会社の軸にしていきたい。だって、たぶん僕がやるのが一番向いていることだから。自分で言うのもなんですけど、どうしても説得力があるじゃないですか。
──松尾さんの考える、元芸人の強みとは何でしょうか?
松尾:元芸人という肩書きって意外と強いんですよ。「現役時代に売れていなかったら『元』なんて意味がない」と感じるかもしれませんが、元芸人というだけで意外と興味を持ってもらえる。それってすごい武器じゃないですか? 元芸人と名乗るのが恥ずかしいという気持ちは僕も理解できますが、武器になるものは武器にしちゃえばいい。
それからのスキルは人それぞれですが、ずっと芸人をやってきた以上、何かしら特技はあると思いますし、その延長線で新たな仕事を見つけられるかもしれません。芸人の世界どっぷりで生きてきたら、それ以外の場所では何がどう評価されるかわかりませんよね。でも僕は両方の世界のことを知っているから、その人が自分では気づかない長所を教えてあげられると思います。
──たしかに知り合った相手に「元芸人です」と言われたら、現役時代を知らなくても気になってしまいます。
松尾:そう。企業側はけっこう元芸人に興味があって、僕のところにも「コラボしたいので誰か紹介してもらえないか」って相談がよく来るんですよ。ただ、肝心の元芸人が僕に全然声をかけてくれなくて……(笑)。プライドもあるだろうし、引退の決断を下すのは難しいのかもしれない。だからまずは気軽に「もしも芸人を辞めるとしたら、どんな仕事があるのかな」とか、何なら「芸人を続けながらでもできる仕事はないか」という副業感覚で相談してみてほしいです。
──今日はありがとうございました。松尾さんがお元気そうで安心しました。
松尾:40代って、自分がなってみると意外と元気なんですよ。今すごくワクワクしていますよ。何でもやれます!
◆取材・文/原田イチボ(HEW)