西勇輝投手(時事通信フォト)
前出の阪急阪神HD関係者が語る。
「矢野監督の一見不可解な言動のベースにあるのは、『予祝』という考え方です。
以前から矢野監督は『予祝』に取り組んでいましたが、今季はますます熱心に取り組むようになりました。監督退任が決まっていることの影響も大きいのかもしれません」
未来と同じ周波数になる
きっかけは、ひとつの出会いだった。阪神の番記者が語る。
「矢野監督に予祝という考えを伝授したのは、メンタルトレーナーの大嶋啓介氏です。2人は2019年頃から交流を深め始め、影響を受けた矢野監督が大嶋氏の考えを野球に取り入れるようになった。文字職人の杉浦氏を矢野監督に紹介したのも大嶋氏です。今年2月には大嶋氏が阪神のキャンプを訪れ、選手相手にメンタルトレーニングを施しました」
大嶋氏は、2004年に居酒屋「てっぺん」を設立し、居酒屋経営とともに、ビジネスマン向けの自己啓発セミナーやアスリートのメンタルケアの活動にも注力している。
本人のホームページによれば、2008年の北京五輪で金メダルに輝いた女子ソフトボールチームや、聖光学院、海星高校など100校以上の高校の野球部で強化研修を行ない、22校が甲子園に出場したという。
その大嶋氏が提唱するのが「予祝」である。
予祝とは、夢や願いごとが達成したと仮定し、先に祝うことで、現実を引き寄せようとすること。要するに、「前祝い」をすることで、夢が成就されるという考え方だ。
なぜ、予祝で夢が叶うのか。「予祝メンタルトレーナー」の肩書きを持つ大嶋氏は、セラピストのひすいこたろう氏との共著『前祝いの法則』でこう説明する。
〈それは、未来に夢が叶ったときと同じ喜びをいまの時点で感じることで、現在の気持ちが夢が叶ったときと同じ周波数になるから、その未来を引き寄せることができるのです〉
この考えに心を奪われたのが矢野監督だ。
「2018年オフに阪神監督に就任した矢野監督は、初キャンプ中のマスコミ懇親会の席で、『皆さんのおかげで2019年、優勝できました』といきなり優勝祝賀会のような乾杯の音頭を取り、周囲を唖然とさせました。また日本一の予祝としてシーズン中に知人から『優勝監督インタビュー』を受けていたこともあります。
選手にも矢野監督のバイブルである大嶋氏の著書を配っている。今年のキャンプで糸井や西勇輝が『予祝胴上げ』を行なったのも、矢野監督の影響が大きい」(前出・阪神番記者)