今回、米CNNテレビが報じたセバストポリ港の入り口に設置されたイルカの囲いは、港への侵入者を発見するためだろう。ロシアの黒海艦隊は、3月に大型揚陸艦が破壊され、4月にも旗艦の「モスクワ」がウクライナ軍の対艦ミサイルの攻撃によるものとみられる爆発で沈没した。
これ以上艦船を失わないために警戒にあたっているとみられるイルカ兵器の供給源が、実は、日本なのではないかとの指摘があるのだ。
日本産イルカは信用が高い
和歌山県の太地町は、イルカ漁の町だ。この町で行われるイルカの追い込み漁は、2009年公開のドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』によって世界中に知られ、反捕鯨活動家が大挙して押し掛けてきた時期もあった。
ここで捕獲されるイルカの大半は食用にされるが、一部は生きたまま海外へと輸出されていることはあまり知られていない。輸出の仲介業者の話だ。
「生け捕りにしたイルカは特殊なコンテナで空輸されます。その数は年間に数十頭から100頭を超えることも。捕獲されてから輸出するまでの期間にイルカにストレスがかからないよう生け簀で飼育し、しかも人間に慣れさせるトレーニングを施すノウハウがあるのは世界において太地町だけです。
動物検疫体制がしっかりしている日本からなら病気を持った個体を買わされる心配もなく、世界の業者からの信用も高い」
太地町から輸出されるイルカの大半はアジアや中東の新興国の水族館向けだというが、なかには軍事利用されるものもいるというのは、業者の間ではよく知られた話だ。
2016年3月のロシアメディアの報道によると、ロシア国防省はセバストポリに配置するためのイルカ5頭を購入する計画を明らかにしたという。皮膚や歯に損傷がないことなどが条件とされたそうだ。そして、前述した通りその年、日本からロシアへ25頭のイルカが輸出された。
ロシア軍港で、プーチン大統領の野望を果たすために毎日必死で泳ぐイルカが日本から運ばれたものだとしたら──なんともやりきれない思いが募るばかりだ。
※女性セブン2022年5月26日号