それにしてもすごいキャリアだ。重厚な役からコメディーまで幅広い役柄をこなし、『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(1994年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。その後も数々の賞に輝き、近年では『64 -ロクヨン- 前編』(2016年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、『Fukushima 50』(2020年)で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、日本映画に欠かせない名優としての地位を確立してきた。
「運がいいんですよ。1つ終えると次の仕事をいただけるというのは。長く続けることができたのも、長く続ける流れがあったからできたこと。才能とか、努力とか、根性とかいうこと以前に縁に恵まれているというか……。作品もそうだし、人との出会いも大きいし」
とはいえ人の縁は移ろうもの。出会いを育んでいくのは容易いことではない。
「確かに、あんなに親しくしていたのに、気づいたら“最近連絡ないな”とかってこともありますよね。でも、ぼくは縁があれば、どこかでまた引き合うだろうと考えています。仕事もそうですよ。大河ドラマだって18年間のブランクを経て、再び出演することになったわけだから」
三谷監督との縁が濃いということもいえそうだ。『THE有頂天ホテル』(2006年)、『ザ・マジックアワー』(2008年)、『ステキな金縛り』(2011年)、『記憶にございません!』(2019年)と、三谷監督の映画にコンスタントに出演している。
「三谷氏と初めて一緒にした仕事は『新選組!』で、そのときは、NHKのキャスティングでしたが、考えてみれば、偶然の引き合わせこそが縁ですね。三谷氏とは相性がいいというか、ユーモアの感性が一致しているというか。とにかく素敵な巡り合わせに感謝しています」
伏し目がちながら、楽しそうに語る様子から、充実した仕事ぶりが伝わってきた。
(第3回につづく)
【プロフィール】
佐藤浩市(さとう・こういち)/1960年東京都出身。1980年ドラマ『続・続事件〜月の景色〜』でデビュー。 今年は映画『20歳のソウル』(5月27日公開)のほか、映画『MIRRORLIAR FILMS Season2』内の三島有紀子監督作品『インペリアル大阪堂島出入橋』(公開日未定)、『キングダム2』(7月15日公開予定)、2023年は『仕掛人・藤枝梅安』(4月7日公開予定)も控える。
取材・文/丸山あかね 撮影/森浩司
※女性セブン2022年5月26日号